青春サイダー (Page 3)
「O,oh,sorry…」
そのまま三ツ矢は直人の腕を引いたまま、幹事である直人の上司に会費を二人分払った。
「すみません、彼に飲ませすぎたようで…送っていきますので、お先に失礼します」
丁寧に断りを入れる三ツ矢にわけがわからないまま引きずられて居酒屋を後にし、タクシーに押し込まれ、そのままドアを閉められそうになったところで、今度は直人が三ツ矢の腕を引っ張りタクシーに引き込んだ。
「おまっ…どういうつもりだよ」
「…さっきはありがとうございました」
それだけ言うと、三ツ矢の言葉を無視して直人は運転手に自分の住所を告げ、移動中は全く会話もなく、目的地で代金は直人が支払い、タクシーを降りるとそのまま三ツ矢の手を引いて自室まで連れて行った。
「おい!なんなんだよ」
三ツ矢の言葉を無視して玄関の施錠を開けて強引に中に連れ込むと、玄関で直人は三ツ矢のネクタイを引っ張り、引き寄せて強引に口付けた。
「んっ…!」
驚きを隠せない三ツ矢に直人は俯き、力の入らない拳で肩を何度も殴った。
「…なんで、いきなり居なくなったんですか」
「…高校卒業後、親の都合でアメリカに飛ぶことになってた。お前には、それを言えなかった」
「なんで、ですか…」
「言ったら、お前ついてくるだろ」
「ついてきますよ!」
顔を上げて直人は声を荒げる。
「だから、それが嫌だったんだよ!」
三ツ矢も負けじと声を上げる。
「…そんなに、俺のこと、嫌いだったんですか」
沈んだ声でこの世の終わりのような顔をする直人に三ツ矢の胸が痛む。
「…違う。お前の人生、奪いたくなかったんだ」
予想外の言葉に直人は弾かれるように顔を上げた。
「お前には、普通に女と結婚して、幸せな家庭を築いてほしかったんだ」
三ツ矢の言葉に直人はきつく拳を握りしめて震える。
「…なんですか、それ…」
直人の様子に三ツ矢は怪訝な顔をする。
「なんで、アンタが勝手に俺の幸せ決めるんですか!」
顔を上げて叫ぶように言うと堰を切ったように直人は話し出す。
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