竜宮北別館は男の花園!?~世話焼き乙彦の家臣仲人計画~ (Page 3)
「…それが理由なら、私がお主を孕ませておる。赤子の頃から世話を掛けた亀之助には、自らの手で運命の相手を見つけ出してほしいのだ」
「…おとひこ…さま…」
くちゅり、と音を立てて離れていく乙彦の唇を、亀之助は名残惜しそうに見送った。舌まで絡めていたのか、顎下(がっか)まで垂れた唾液が艶めかしい。
「乙彦様!亀之助ばかりズルイですッ!!」
突拍子もなく始まった情事を見守ってやりたかったのだが、周りがそうはさせない。鯛やヒラメであった者たちが、傷だらけとなっている亀之助を押しのけ…間に割り込んできたのだ。若き魚たちは亀之助のように恥じらうこともなく、褌(ふんどし)1枚の格好となると――乙彦へと擦り寄り、膨らんだ乳房を揉ませていく。他の者たちも股に掛かる布をずらし、尻穴から海水を出し入れするなどして彼を誘惑していた。
「客人の前だというのにふしだら極まりないな…さて、次に我が子を孕んでくれるのは、どやつだろうな?」
家臣たちの誘いを当然だというように受け入れた乙彦は、次から次へと彼らのアナルに太く長い竿を突き挿し、白波が立つのではないかというほどの激しいピストンを繰り返す。
(…こんなの…浦島太郎の話じゃねぇっ!!)
「磯浦殿。ここ【竜宮北別館】は男色の海洋生物たちで構成された宮殿なのだ。この付近を住処(すみか)としている生物たちは雄同士で交尾をし、子孫を残す。亀之助はな、仕事に没頭するあまり唯一よき相手と結ばれておらん。私はアヤツにこそ真実の愛とやらを知ってもらいたいのだ」
「乙彦様…!?磯浦様がお困りになりますから、余計なことを仰らないでください!…私海面へ出て、夜風を浴びてまいります!」
他の者たちと乙彦との色事を見ていたときでも、顔を朱色に染めるだけであった亀之助が震えだす。彼は宴会が行われていた部屋を飛び出していった。
「アヤツ、お主に抱いた感情に戸惑っておるな。磯浦殿…覚悟があるのなら、亀之助の相手を務めてもらえないか?アヤツも他の雄同様に発情し、産卵期だって迎えるのだが――相手がおらぬから、無精卵を生み続けているのだ。砂浜を歩いていたのなら、産卵場所を探していたのだろう。ともすれば今頃1人で産んでいるのかもしれん。亀之助の初めての相手は適当な雄ではなく、本気で愛した男がよい。磯浦殿…亀之助を好いてくれるのならば、夫婦(めおと)となってくれぬか?」
「それ…本気で言ってんのか…?」
宮殿の主である乙彦からの願いでは逆らうことができない…とは思ったものの、亀之助は海亀。例え乙彦の術で一時的に人間の身体を成していても、それは変わることのない事実である。そしてまた、俺がこの本の“外部”からやってきた人間であることもまた、事実なのだ。
しかし――。
『命の恩人である磯浦様の前だというのに…席を外してしまい申し訳ございませんでした。お背中お流ししますから、我が宮殿自慢の温泉に浸かってお休みください』とフラフラとした足取りで再び俺の前に現れた亀之助を見て、この迷いは吹き飛ぶことになる。
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