幸も不幸も君の手で (Page 5)

「俺さ、結構運がいい方なんだけど、実は今日、セフレに関係切られて、残念だなぁって思ってたら、コウタくんが現れたんだよね」

一体、アタルくんは何を言っているんだろうか。

嫌な予感しかしない僕に追い討ちをかけるみたいに、アタルくんは僕の体の上に覆いかぶさってきた。しまった、と思ったときにはすでにお腹の上に乗られて、完全にマウントを取られていた。

相変わらずのイケメンが、ゾクリとするような嗜虐的(しぎゃくてき)な瞳で僕を見下ろしている。

「やっぱり、俺、運いいみたい」

ああ、やっぱり僕は不運だ。

やけにひんやりとした手の平が僕の頬を撫でてきた。

「コウタくんさぁ、確かにツイてないのもあるかもだけど、多分、チョロいって周りから思われてきた人生なんじゃない?」

「チョロ…い?」

「だって俺、今日コウタくんに会ったばっかだけど、ヤレるって思ったもん」

そうして、再びアタルくんは僕の唇を奪った。器用に動く舌が、唇をノックしてきて、そうする必要もないはずなのに、僕の口元はふにゃりと緩む。さっき水を飲まされたばかりで微妙に冷えていた口内に、無遠慮に入りこんできた舌はひどく熱かった。

男の人とキスなんてしたことなくて、女性とのキスだって大した数はこなしてないけど、このキスは、アタルくんのキスは、とろけそうなぐらいうまかった。

何で僕は、男の人に無理やりキスなんてされて、キモチイイなんて思ってしまっているのか。おかしいと思うのに、下半身がズクンと疼く。

どうか気づかれませんように…なんて、そんなの無理に決まってて、僕の口を犯しながら、アタルくんは下半身に手を伸ばしてきた。僕のソレが反応してることを教えたいのか、指先でスーッと根元から上まで、撫であげてくるから、ピクっと腰が動いてしまう。フフッと鼻で笑って、アタルくんは唇を離した。

「酔ってんのに元気だね。溜まってる?」

言って、アタルくんはいとも簡単にズボンの中に手を入れてくる。

「ぁっ…やだ」

「大丈夫だよ。ちゃんとキモチよくしてあげるから」

そんなこと頼んでない、と言いたいのに、言えない。だって現実、僕のモノはアタルくんのキスで簡単に勃起してる。男の人にホテルに連れ込まれて、キスされて、下半身を触られて、感じてしまってるんだ。

慣れた手つきでアタルくんは僕のズボンとパンツをずり下ろして、たかぶった僕の自身を握ってきた。

「んっ…ぁ」

人に触られること自体が久々すぎて、期待するみたいに全身があわ立った。この人にこのまま身を任せていたら、どれほどの快感をもらえるのかと、胸が騒いだ。女性の手つきとは違う、無骨だけど乱暴ではないそれは、まるで自分自身が大切に扱われる価値のある存在なのではないかと錯覚させてくれた。

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