年の差なんてバイバイ (Page 2)
少し早めの夕飯は炒飯にしよう、そう考えてベッドから立ち上がるものの、背後から聞こえた舌打ちに心臓が跳ねる。
質問に答えてくれないのは気に入らなかったからだろうと思うけど、多いのか少ないのかも言わないで舌打ちはグサッとくる。
「…どこ行くんだよ」
「先にシャワー浴びちゃおうかなって。お腹も空いたでしょ?汗を流したらすぐにご飯作るよ」
思った以上に機嫌が悪そうだから炒飯に春兄が好きな長ネギを多めに追加しておこう。
いつもなら何作るのって嬉しそうに声をかけてくるのに、今聞こえてくるのは重たい溜息だけだった。
俺たちは滅多に喧嘩なんかしないからこういう重たい空気ってやつが苦手だ。
「ああそう、やれなくなったら用済みってことか」
「なっそんなわけないだろ!」
「ちょっと優しくしてくれっつっただけでそれだもんな、なら初めから抱き潰しても文句言わねえやつんとこ行けよ」
確かに俺は両極端なところがあって、いい塩梅ってやつが難しい自覚はある。
自分でもドン引きするくらい、それこそ物心ついた頃からずっと春兄が大好きなのに、それが全然伝わってなかった。
他のやつなんて1ミリも考えられないくらい大好きだから、思わず握った拳の力を抜いて大きく息を吸う。
衝動的に誰かを殴りそうになったのは初めてで、早く落ち着いて話がしたいのになかなか呼吸が整わない。
「は、春兄こそどこに行くつもりだよ」
「友達んとこ。ガキ追い出すわけには行かねえし俺が出てく」
「…そんなの絶対に許さない、俺がどんな思いでこの部屋探したと思ってんの?本当に嬉しくて、待ちきれなくて何回もここ見に来たんだよ」
立ち上がろうとする春兄の肩を掴んでベッドに押し倒すと、春兄が俺を睨みつけてきた。
泣きたいのは俺の方なのに春兄が先に涙を溢したから、俺はぐっと堪えて濡れた頬を指で撫でる。
春兄に嫌われたくなかった俺は今まで一度も春兄に反抗したことがない。嫌だと思って飲み込んで、やり過ごしてきた。
「言ってくれないとわからないよ、どうしてそんな急に出ていくなんて話になる?春兄がいなくなるなんて絶対に嫌だ。嫌ならセックスなんかしなくていい、何もしなくていいから春兄はいなくならないで」
拭うそばから零れる涙を舐め取って、目尻にキスをしても嫌がりはしないから何度も唇を触れさせて春兄が落ち着くまで離れずにいる。
嫌だと思うきっかけがセックスだけなら俺の中では選択肢なんて一つしかない。
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