幼馴染アイドルの恋愛事情~不愛想彼氏の愛情表現は言葉責めくすぐりプレイ!? (Page 3)
しかし、彼氏として愛情表現が乏しいのは…いささか不満ではある。幼少期は幼馴染と同一の恋愛感情を抱いていることが嬉しくて、『ゆーと、オレ、おまえのことがすき。あしたもあさっても、ずーっとゆーとがすきだよ』なんて恥を忍んで耳打ちしていたし、勇人も顔を真っ赤に染めて『オレもすきだよ、さや』と大人顔負けのキスで返してくれていたのに、今ではセックス中しか愛を確かめ合えないのだから。
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「なんでお前と相部屋になんなきゃいけねぇんだよぉ――ッ!!」
「…いちいち声がデケェんだよ、馬鹿。俺だって尻軽なお前と同じ部屋だなんて死んでもごめんだってのに」
格安ビジネスホテルは、声がよく響く…なんて感心している場合ではない。
すべてはマネージャーの不手際。コンサート終わりに泊まる予定だった場所はこのビジネスホテルの真裏。星が4つも5つも付くサービスが受けられ、価格もゼロの数が異なるのだが――名前が酷似しているためか、予約を取り間違えたのだとか。まぁそれは…百歩譲って許すとして。
「もう!先輩たちは同棲中の恋人なんですから、家だと思えばいいでしょう?今晩こそ仲直りしてくださいね。どちらかが僕と一緒の部屋になったところで、片方が嫉妬に狂うんですから…」
当日予約では部屋数が足りず、俺らに割り当てられた部屋は2部屋のみ。この状況で俺と勇人が恋仲であることを理解している羅那は正論を並べ立て、同室へと導こうとしていた。
「いいですか、乃木先輩。可愛さと色気だけが取り柄の有野先輩が人気歌番組常連のNACOROちゃんと付き合うと思います?誰がどう見ても釣り合わないですよ!乃木先輩が有野先輩を信じなくてどうするんですか。2人が“不仲”だと思われた日には僕ら、解散に追い込まれますよ」
「――ズケズケと言ってくれるな、お前は」
やれやれと困った表情を浮かべている羅那は、意地の張り合いを続ける俺たちの間に立ち、安定したグループ活動維持のためにも、早く関係を修復しろと迫ってきたのだった。
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「…沙也。風呂入れたからさ…先に浸かってこいよ。どうせすぐ寝ちまうんだから」
“仲直りしろ”と圧を掛けられてしまえば、勇人同様に俺までもが無口となる。気まずさに打ち勝てず部屋に入るなりベッドへと直行し、マットレス上に身を投げて恋人に背を向ける俺とは対照的に、勇人は普段と変わりなくテキパキと部屋着に着替え――コンビニで購入した酒やつまみの類を冷蔵庫へ入れると、俺のためにわざわざ浴槽に湯を張ってくれたのだから驚いた。
(勇人の奴、急に優しくなるなんて…セックスする前みてぇじゃん)
勇人の些細な所作で俺は彼が今何を考えているのかわかってしまう。俺に甲斐甲斐しく世話を焼くのはいつものことなのだが、特段優しくなるのは…セックスしたいという気持ちの表れであった。
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