嫌われても俺は (Page 2)

夜、ホテルでの待ち合わせ。俺は、30分前に予約していた部屋に着いた。

20分後、部屋のドアが開く。竜也が入ってきた。俺の顔を見た瞬間、満面の笑みで俺を見た。

茶色のウルフカットの髪、切れ長の目、通った鼻筋、笑顔から見せる八重歯、なにもしゃべらなかったら、女性にモテそうな顔つきだ。

「悟。どうしたんだ?こんな部屋に呼び出して」

なにも怪しむことなく近づいてくる。

――俺はこの笑顔を手放せるのか?

「ちょっと話があってな」

いつもの笑顔ができているか自信がない。準備していたワインをグラスに注いだ。

「最近忙しくてな…悟の方はどうなんだ?」

「俺のほうもあわただしいよ。…これ…」

「ありがとう」

竜也がワインを飲む。俺は、香りを楽しんでいるふりをして、竜也の様子を見ていた。5分後、竜也は寝息を立てはじめていた。

「悪いな…」

俺は竜也の服を脱がし、手足をベッドの四隅に縛った。準備は完了した。…この寝顔を本当はずっと見ていたかった。

俺は、竜也の顔面に氷水を勢いよくかけた。このくらい刺激を与えれば起きるだろう。

「ぶはっ!つめてっ…!なにするんだよ悟!ってなんだよこれ!」

「少し、ワインに精神安定剤を混ぜたんだ。よく効いただろ」

「悪ふざけはよせ!縛っているものをほどけ!」

一人前に俺にがんを飛ばしてきた。さすが組の舎弟になっただけのことはある。

「今日は竜也、お前に近づいた真実を伝える」

――嘘だ。これは俺の本当の気持ちじゃない

「俺は、お前を利用して組の内情を知ろうとしていた」

――違う。竜也と再会したのは偶然で、好きになった後に組に入ったことを知ったんだ

「だけど、お前はなかなか内情を吐かなかった」

――いいや…俺があえて聞かなかったんだ

「だから、お前は用なしだ」

――俺は、お前のことが大切なんだ

「俺は、お前のことを利用していただけだ。察しろ」

――愛している…だけど、こうしないとお前が大変な目にあってしまう

冷たく機械的に竜也に言葉を発した。竜也の表情がどんどんと絶望に落ちていくのが見えた。

「俺をだましていたのか?悟…。だけど、そんなはずない…だって、悟…そんな悲しい目を…」

「俺はお前のことは道具としか思っていない」

竜也が俺の核心を突くまえにいいきった。これで、もう後戻りはできない。

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