仲直りは『×××するまで出られない部屋』で
アキは目を覚ますとどこもかしこも真っ白な部屋にいた。扉は開かず、部屋にいるのはケンカ中の恋人だけ。恋人の竜也とは同棲していて、あることからアキは一週間ほど前から家出をしていた。それから電話もメールも対面もしてない。それが今、変な部屋に二人きり。そこは『セックスをしないと出られない部屋』らしく──。
目が覚め、ぐるっと周辺を見渡す。壁や床、天井や扉までも真っ白な不思議な部屋。
部屋にいるのは俺を含めた二人の男子。
というか、恋人の竜也(りゅうや)が寝ている。
「えぇ…なんだよ、これ」
目が覚めたときに隣に置いてあった手紙にため息をつく。
意味のわからないことを書かれた手紙。
『セックスするまで出られない部屋へようこそ』
つまり竜也とイチャイチャラブラブしろ、ということらしい。
「意味わからん! マンガかよ!?」
妹のボーイズラブマンガにこういうテーマがあった気がする。
BL作家の妹いわく、定番だとか。
「いやいやいや、ここは現実だし。マンガじゃないし!」
扉は開かない、窓もない、不審者もいない、携帯電話もない。
いるのは恋人…、ケンカ中の恋人が真っ白なベッドの上で寝ているだけ。
(そういえばケンカしてたんだった。この状況に驚きすぎて忘れてたけど)
一週間くらい会わなかったし、口を聞いていなかった。
(絶対に俺悪くないし。浮気した竜也が悪いんだし!)
しかも妹と。俺の妹とホテルに入ったのを見てしまったのが始まりだ。
それもただのビジホじゃない。ラブホだ。ラブホテルだ。
(あーもうっ!)
思い出したらまた腹たってきた。
ケンカ中も妹とは頻繁に会っていたようだし、仲がいいのは昔からだからいまさらって感じだし。
でも恋人に黙って、恋人以外の人とホテルに入るのはどうかと思う。しかもラブホ。
そんなの誰だって怒るだろう。
妹に手を出したとなれば、男の自分はからかわれたとか思ってしまう。
「…んー、アキぃ…?」
自分を呼ぶ声が聞こえて、びくっと体が震えた。
手紙をとっさに隠し振り向くと、ベッドから起き上がった竜也が目をこすりながら俺をじっと見ていた。
久しぶりに見る寝起きに胸がドキッと高鳴る。
だけどすぐに思い出すのは、妹と腕を組んでラブホに入る姿。
「アキ、そんなに離れてないでこっちにおいで」
「ヤダ」
「アキ…」
絶対に嫌だ。
別に裏切られたなんて思わない。男同士で未来があるほうがおかしいし。
でも傷ついた。本気で好きで、本気で付き合ってたから。幸せになれなくても覚悟は持っていたから。
ひたすら可愛い
ランちゃんになりたい人生でした。
こちらの兄と兄の恋人で飯3杯はいけます。
匿名 さん 2020年12月15日