高層階の人形
アルバイトをしつつ体を売っていた美しい青年。そんな青年を気に入った、とある若社長。条件付きでその青年を買い、自らが住むマンションに住まわせることに。本来は自由奔放な青年に惚れ込む社長は、なんでも与え毎日のようにその体を愛したが…。
「っ、ん…はぁ、ぁ、あッ…!」
「くっ……っ、は……可愛いよ、ソラ…」
薄暗く広い寝室の中、遮光カーテンの下で僅かに床を照らす朝の光。
男二人で眠っても体を重ねても余裕のあるキングサイズベッドの上、俺はリクさんに抱かれたまま達した後の余韻に身を任せてまぶたを閉じる。
「朝食は用意してあるからね。今日は早めに帰れそうだから、夕食は外で食べようか」
「うん、ありがとう。気をつけて行ってらっしゃい」
未だベッドの上でまどろむ俺に、着替えながら優しく声をかけてくれるリクさん。
俺は恵まれていると思う。
コンビニでバイトをしながら、刺激と金欲しさに体を売っていた俺を、リクさんは大金をはたいて買ってくれた。
バイトをする必要はない、毎月のお小遣いももらえるうえに欲しいものは何でも買ってもらえる。
リクさんの作ってくれる食事やたまにとってくれる出前も美味い。
その代わり、リクさんの同伴なしに外に出てはいけない。
今日は出られるみたいだけど。
メールやチャットを含め、他の者との接触をしてはいけない。
この関係を他言してはいけない。
俺が外に逃げ出せないように、リクさんが用意してくれたガウンとスリッパ以外の衣類や靴は隠されている。
もちろん、リクさんの服を着て逃げられないように、クローゼットには鍵がかけられている。
玄関も、パスワードの入力をしないと出られない。
少しの自由はあれど、窮屈な生活には違いない。
でも、こんなに好待遇で暮らしに困らないなら悪くないと俺はリクさんの契約条件に同意した。
リクさんのマンションにほぼ軟禁状態になってから、しばらくはかなり楽しませてもらった。
ゲームはあるし、マンガも読み放題。
それに、毎晩満足するまでセックス三昧。
リクさんは体力もあるし、テクニックもある。
でも、これもずっと続くと退屈になってきて、刺激を求めに外に出たくなった。
もらったガウンを羽織って、ベランダの大きな窓の前に立つ。
曇りないガラス越しに映る、水色の絵の具で染まった水をぶちまけたような快晴の空。
たくさんの背の高いビルや、ここのような高層マンションに長く伸びる川。
夜にはビル群の光や車のライト、赤くゆっくり点滅する航空障害灯や店のネオンたち。
遠くまで見渡せるきれいなこの景色も、もうとっくに見飽きてしまった。
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