裏切り行為
アイラは一週間前、恋人の悠馬に閉じ込められていた場所から逃げ出した。住み込みのレストランで働き始めたが、客として悠馬が訪れる。あの生活に戻りたくないアイラは、レストランの裏口から逃げ出そうとするが連れ戻されてしまう。取返しのつかないことをしたと気づくが、もう遅く──。
好きな人がいた。
そう、好きな人が『いた』。
パフェが有名なレストランで一週間前から俺、真白アイラは働いている。
好きな人から逃げて家を抜け出した俺をこの店のオーナーが住み込みで雇ってくれた。
住み込みだから店を出ないし、アイツに住所もバレない。
スマホも持ってないし、家からも離れているから見つからない。
それに甘いものが嫌いなアイツが、パフェで有名なこの店に来るわけがないから。
だから、こんなところにいるなんて思わなかった。
しかもそれを頼むだなんて…。
「なん、で…?」
「おー」
大きなイチゴチョコパフェを運んだ先にいたのは、めっちゃイケメンの見るからにお金のありそうな男。
パフェの乗るトレイを落としそうになり、慌ててテーブルに置いたが顔をあげられない。
なんでここにいるんだ。
なんでこんなところに悠馬(ゆうま)がいるんだ。
そんなことばかりが頭を占める。
ささっと置いて離れよう。
なにも言わずにお辞儀をすると、騒がしい店内にも関わらず、しびれるような彼の低い声が耳に届いた。
「終わったら来い」
たった一言なのに、俺の身体は期待にうずく。
教えこまれた悠馬を、身体が覚えている。
だけど俺は悠馬のものなんかじゃない。
「ぜ、全部食べれたら」
「あ?」
「じゃないと…ムリ」
なんてな。
こいつが食べれるわけがない。
なにがなんでも俺を連れ戻すに決まってる。
横暴で俺様で自己中心的な悠馬は、一度も俺の気持ちをくみとってくれたことはない。
(…早めにあがって裏口から出よう)
*****
なんて逃げれるわけがなかった。
裏口からこっそりと出たとたん、俺は悠馬に捕まって家に連れ戻された。
「やだっ、やだってば!」
大きなベッドに転がされ、ガチャンッと音がたつ。
手錠がベッドと手首をつなぎ、逃げようとするたびに鎖が音をたてる。
「騒ぐな。ケガするぞ」
「ふっざけんな!」
「ふざけてんのはどっちだ。ちゃんと帰ってくれば許したものを」
バサッと音をたてながら悠馬は服を脱ぎ捨てる。
筋肉がつく悠馬の上半身を見ただけで俺の心臓がはねた。
たった一週間離れていただけなのに、俺の身体はこんなにも期待にうずく。
悠馬から離れたかった。
こんな生活に戻りたくなかった。
「…悠馬、おれ」
「俺から逃げれると思うな。おまえは俺のものなんだよ」
ものなんかじゃない。
ものなんかじゃ、ないのに。
「なぁ、アイラ」
「…ちがう」
「違わねーだろ。まだなんもしてねえのにタってんじゃん」
ズボンの上から悠馬の手が触れ、ピクピクと身体が反応する。
その反応に満足したのか、悠馬は嬉しそうな笑みを浮かべた。
そしていつものように命令をする。
「足、開け」
ゾクリとするような低い声。
甘美な響きをもつ悠馬の声に俺は逆らえない。
膝をたて、足を開けば悠馬は近づいた。
「腕、あげろ」
「ッ…」
ジャラッと音をたてながら両腕をあげれば、シャツに乳首がこすれて吐息が零れる。
それすらも悠馬は楽しそうで、ふぅっと胸元に息を吹きかけた。
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