二人の夜 (Page 2)
「つーかお前さ、お湯溜めてないんだから狭いに決まってんだろ」
大の男二人が浴槽の外に並ぶのは、なかなか滑稽だった。こんなことなら風呂溜めればよかった、とか言ってるけど、そんなこと最初からわかりきっていたことだろう。
「まぁ、さっさと済ませればいいっしょ」
奨太が俺の体にシャワーをかけてくる。その水温の低さに、俺は思わず飛び跳ねた。
「お前、ふざけんなよ!」
「ぶは、めっちゃいいリアクション」
奨太の手から、シャワーを奪い取ろうと手を伸ばす。俺よりも随分と細いその手首をつかむと、奨太は目をぱちくりとさせてこちらを見た。
「なに、怒んなよ」
「や、怒ってないけど」
悪戯っぽい笑顔。これにだまされてはいけない、とその手首を自分のほうに引き寄せる。すると、驚いたような声が聞こえて、その瞬間体勢を崩した奨太が、俺の胸の中に飛び込んできた。
ぴったりと肌と肌が密着してしまって、思わず息を飲む。
「うわ、ごめん!」
そう言って、体を離そうとした瞬間、俺の腰あたりに奨太の腕が回された。
「待って、このままがいい」
「…えっ…?」
自分の耳を疑うような言葉が聞こえてきた。驚いて、奨太の顔を覗き込もうとしたけれど、俺の肩口に顔がうずめられていて、それはかなわない。
「…なー、陽太。したい」
「…は?」
驚きすぎて、一瞬言葉を失った。まさか、奨太の口からそんな言葉が出るなんて思ってもみなかった。
奨太の耳がほんのりと赤くなっているのが見えて、不覚にも「かわいいな」なんて思ってしまった。
密着した肌の感触が心地いい。
けれど、太もものあたりに反応を示し始めているモノが押し付けられていて、男同士のセックスなど興味がないはずなのに、興奮を抑えられない。
奨太が顔を上げて、噛みつくように口づけられた。当然のように舌先が侵入してきて、拒む間もないままに俺の舌をすくいあげて、絡め取られる。
浴室に響くシャワーの音と、唇から漏れる水音。むくむくと反応を示し始めた自身が、奨太の内ももを押し上げていくのがはっきりとわかる。
奨太が俺の顔を覗き込んで、今度は触れるだけのキスをする。優しく微笑んだかと思うと、耳元で吐息交じりに囁かれる。
「…今日だけ、俺の好きにさせて」
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