背徳が愛を乞う (Page 3)

ヒロヤはグッと上体をマサルの方に乗りだして、上目遣いに見上げてきた。

「心配しなくても、元気だよ。それにこの仕事も…まぁ1番の目的は金だけど。俺もせんせーと同じ、ホモだから。たまに面倒な客もいるけど、それなりに楽しんでるから」

そう言われてしまってはもうなにも言えない、とマサルは思った。

ヒロヤの担任だった頃から7年。それでも、ヒロヤが現状に困っていたらできる範囲で力になりたいと考えていた。中学の頃、ロクに力になってあげられなかったぶん、なにかできるならと思っていたのだ。
多分それは自己満足で。自分の中の心残りをなくしてしまいたかっただけかもしれないけれど。

「そう…か。急に会いにきて悪かった。ムラタが今を楽しめてるならそれで安心だよ。じゃあ…」

言って、立ちあがろうとしたとき、グイッと手首を掴まれて、中途半端にあがった腰は再びベッドに降りた。

「帰んの?」

「え?うん。ムラタの顔が見たかっただけだから。あ、もちろん料金は払うよ」

「まだ時間あるよ。120分コースなのに30分で終わったら俺が店長に怒られるし」

言って、ヒロヤはミニテーブルに置かれている時計をチラリと見やった。
確かにまだ、終了時間までは随分と余裕があった。

「そっか…。そこまで考えてなかった。じゃあ…時間までなにか話でも――…」

マサルの言葉にかぶせるように、ヒロヤは声をあげて笑った。中学の頃、笑顔すらほとんど見せなかったヒロヤが声をあげて笑う。それはマサルにとってなかなかの衝撃だった。

「せんせーってやっぱ面白いね」

「お…もしろい?」

ヒロヤは首をコテンと傾けて、クスクスと笑い続けている。

「中学ん時も、変なトコ真面目で面白い人って思ってたけど」

「そう…だったかな。まあ…ゲイで結婚もできなくて、ゲイ風俗利用するような人間だけどね」

そう言ってマサルが笑い返せば、ヒロヤは途端に笑顔をやめた。

「そう。ゲイ風俗だよ。ここ。だからせんせー」

マジックでも披露するかのような、キレイな所作でヒロヤはバスローブのヒモをといた。
右肩だけハラリとローブがずり落ちて、白い肌が露出する。

「俺に仕事、させてよ」

トン、とヒロヤはマサルの肩を押した。たいした力ではないのに、いとも簡単にマサルはベッドへと仰向けに沈んだ。

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