観覧車とヤクザ~再会はゴンドラの中で~ (Page 2)
「お前も女々しい奴だな、俺と最後にデートした遊園地に就職するとは。どれだけ俺が好きなんだよ」
「!っ」
図星を突かれて息が詰まった。
苦しくなるほどの気恥ずかしさに息を詰めていると、元雅は背広の上着を脱いで床に放る。
唖然と服を目で追った亮介は胸を突き飛ばされ、ゴンドラが揺れた拍子に体勢を崩し、背広の上に倒れ込んだ。
「本当に健気だな、亮介」
「……ま、待て!」
ニヤッと笑った元雅がネクタイを緩めながらのし掛かってきて、亮介は本気で慌てた。
唐突な展開に頭が追いつかない。
なぜこんなことになったのかわからない。
どこか現実離れしているのに、手首を掴んで床に押しつける元雅の熱い身体は現実だった。
慣れ親しんだ観覧車が回る音ではっとして、亮介は強引な腕を外そうと藻掻いた。
「くそ、ふざけるな、元雅! お、俺のことはもういらないって言ったのはお前じゃないか! 俺を捨てたのはお前だ!」
「あぁ、そう言った。だが取り消す。お前が必要だったから、いらないって言ったんだ」
「はぁ!?」
時間が一気に高校のころまで巻き戻ったようだった。
好きだと告白するなり抱かれ、どうにか付き合うことになったと思ったら、卒業と同時に捨てられた。
あの時のすさまじい苦痛はいまだに胸中に残っている。
全力で睨み付ける亮介を見下ろし、元雅は意味ありげに目を細めた。
「意味がわからないか? そうだろうな。だがお前にとっても辛かったように、俺にとっても最悪の十年だった。価値もない連中がお前と付き合うのをずっと見てきた。あんな連中がお前と釣り合うとでも?」
「……――」
何もいえなかった。
今の言葉でこの十年もの間、彼に監視されているとわかったが、その理由がまったくわからない。
元雅は呆然とする亮介の様子を見て鼻先で笑い、ズボンのベルトに手を掛けるなりあっという間にほどいてしまった。
ガタンっと鳴ったゴンドラの音で亮介はようやく我に返る。
「も、元雅! お前、まさ――」
「四年前に付き合ってた男はどうだった? ここに突っ込ませたんだろう?」
「ぁ、……ぃッ!」
下着を強引に押し下げた手が脚の付け根を強く押し、指先がかすかに食い込んだ。
弾けた痛みに身を震わせると、元雅はじわりと欲情の籠もった笑みを浮かべ、乱暴にベルトを掴んで亮介の身体を裏返した。
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