観覧車とヤクザ~再会はゴンドラの中で~ (Page 4)

「ぁ、アァ……ッ はぁ、ぁ、……ぅ、ぐ、……ひぅ!」

 つま先まで走った濃厚な愉悦に息を詰めてぶるっと震えるなり奥までまた突かれ、過ぎた愉悦に手足が勝手にバタついた。

 いやだ、と反射的に口走っても元雅は動きを止めず、腰を掴んで激しく蹂躙しながら亮介、亮介と何度も名を呼んでいる。

 観覧車のゴンドラがガタガタと回る音すらとうとう耳に入らなくなり、亮介は全身を満たす快感に身を委ねて元雅の下で身をくねらせた。

 彼の荒い動きに合わせて腰を揺らしながら最高の愉悦を貪る。

「うぁ、ぁ、ゃ、もとま、さ、……ひぅ、ぅ、ン、奥、奥突い、て、もっと、もっと強く、ぁ、ひぅ、んぁ、も、もうダメ、出し、て、イッてくれ、よ、……ぅ、ぁ、ア……ッ!」

 きつく締め付ける中で元雅のもともと太い性器がぐっと膨らみ、びくびくと跳ねた。

 同時に腹の奥で広がった熱に胸の中まで熱くなり、亮介はここがどこかも忘れて悶え、懐かしい匂いがする背広に顔を埋めて荒い息を零した。

 真っ白い愉悦が爪先からつま先まで駆け抜け、その心地よさに浸って脱力する。

「……まったく、もっと保つかと思ったが、相変わらずの締め付けだな」

「ンッ」

 ぱんっと腰を叩かれて我に返り、亮介は気恥ずかしさに顔をしかめながら首を捻って振り返った。

 相変わらず元雅は涼しげな顔をしていたが、叩いた手を亮介の腰に回して丁寧に持ち上げ、上体を抱き寄せながらゴンドラの床に座り込んだ。

「……――」

 羞恥や混乱で亮介が何もいえずにいると、元雅は顔を上げて周囲を見回し、綺麗な眺めだなとつぶやきながら自分の乱れた髪を撫でつけた。

 やがてその手を亮介の腰に回し、頭を落として肩に額を押しつける。

「……悪かったよ、亮介」

「!」

 家柄のこともあり、元雅が謝ることは滅多になかった。

 思わず息を飲んだ亮介を両腕で優しく抱き締め、白いワイシャツに赤いネクタイを締めたかつての同級生はうつむいたままゆっくり息を吐いた。

「俺はお前と別れたくなかった。だが男と付き合うなんて認めねぇって親父にいわれて、……お前になんかされそうで、別れるしかなくなっちまって。それでお前に俺を覚えていてほしくて、本当に酷いことをいった」

 ――お前はもういらないんだよ、亮介! 俺にはお前は必要ねぇんだ! いいか、二度と俺の名前を呼ぶな!

 脳裏にあの日の言葉がよみがえる。

 亮介がかすかに身体を硬くすると、それを察した元雅がそっと背中を撫でた。

「親父にお前のこと、認めさせるまでこんなに時間が掛かっちまって、本当に悪かった。すぐに許してくれるとは思ってないが、……亮介」

 顔を上げた元雅は目にうっすらと涙を浮かべていた。

 高校の時分でさえ見たことのない泣き顔に息を飲み、亮介は何かを言おうとして、言えなかった。

 ただ涙があふれる。

 それは喜びと嬉しさの涙だった。

「愛してる、亮介」

「――……」

 すぐに彼を許せるかわからない。

 だがこの十年、ずっと聞きたかった一言に身を震わせ、亮介は「ふざけんな!」と罵りながらもかつての恋人に両腕で抱きついた。

 すぐに強く抱き返してくれる腕はあの頃より太く、がっしりしている。

「もうお前を離さない、愛してる」

「……元雅」

「お前は俺のものだ。もう誰にも何も言わせねぇ」

 そう言い切ってから、ふと我に返って元雅は「言わせない」と言い直す。

 それは離れていた十年を感じさせる変化で、寄り添う身体はその月日の分、力強くなっていた。

 亮介は思わず笑って彼を見返し、これから恋人になるだろう男にそっと寄り掛かりながら、俺の大切な観覧車をちゃんときれいにしろよ、とぶっきらぼうにつぶやいた。

Fin.

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