炭酸ジュースとお酒 (Page 8)

「イッた?」

カズシがそう聞いてくるが、俺だってなにが起こってるのかわからない。

「ドライオーガズムってやつ?初めてやのにすごいな、トーマ」

「なに…がっあっあああんっ」

わけがわからずカズシに聞こうとしたら、再び激しく奥を突かれて、さっきよりも強い快感に襲われた。

そこからの記憶は曖昧で、カズシに突かれるたびに快感がどんどん増して、何度も果てたような気がする。
けれどやっぱり、俺の自身から精が放たれることはなかった。

*****

「まだ動けそうにない?」

タオルケットにくるまってゴロリと横たわる俺の腰を、カズシはヨシヨシと撫でてきた。

「無理。もう今日はお前んチ泊まる」

「それはいいけど知っての通りウチ、布団1セットしかないから、オレと添い寝になるけど…」

「別にいいよ。ってか一緒に雑魚寝なんて何回もしてるやろ」

添い寝なんて今更なのに俺の身体を心配してくれているのか、と思ったらカズシはとんでもないことを言いだした。

「いや…隣にトーマが寝てて、オレ襲わず我慢できるかなって」

「はぁ!?フザケっ…―」

思わず身体を起こそうとして、腰と尻の痛みに悶絶する。
ゴメンな、と言いながら、カズシはまた俺の腰をさすってくれているけど、さっきの発言からして、本気で心配してくれてるとは思えなくなった。

「タクシーで帰ろかな…」

「ごめんって!襲わへんから…」

慌ててそう言うカズシだけどその語尾はどうも頼りない。
そんなカズシを横目でにらみつけて、はぁと俺はため息をついた。

カズシに誘われるままにセックスをしてしまったわけで、これからどうなるのか。
さっきのカズシの口ぶりからして、俺とのセックスは嫌なものではなかったようだ。

じゃあ俺は?

カズシとのセックスがどうこうよりも、セックス自体が初めてだからなんともいえないのだ。
ただ、それは悪いものではなくて、頭がオカシクなりそうにはなったけど、カズシにたいして怒りの感情は全くわいてこない。

いや、むしろ…

「あのさ、トーマ」

俺の背中に、カズシの声がかかる。

「オレの恋人になるの、前向きに検討してくれませんかね?」

カーテンの隙間から覗く月明かりがやけにまぶしくて、俺は何もいわずに目を閉じた。

Fin.

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