計画の愛

・作

花の香りをまとう上司に抱かれた中村健は、彼に密かに恋をしていた。仕事の礼に宅飲みに誘われ、中村はこっそりとそのワインに媚薬を混ぜる……。溶ける理性の中で必死に噛み殺す言葉。「僕も好きだよ」彼のその言葉の意味とは──。

 あまり大きい企業ではないけれど、仕事の忙しさはそれなりか、なかなかのものだという自覚はある。残業も、まあ毎日ほどほどにある。俺自身の仕事というよりは、後輩の手伝いとか、念のためを見こした準備だ。
 あとは、上司の空気を読んだり、とか。

「お疲れ様です。藤本さん」

 藤本忠司は俺の上司だ。デスクに近づくほどに、いつものフローラルな花の香りが鼻の奥をくすぐる。香水なのか、柔軟剤なのかはわからない。

「ああ、お疲れ。中村君はまだ帰ってなかったんだね。それは?」

 ギシ、と椅子の背もたれが鳴り、穏やかな声が発せられると、少しだけ煙草の匂いが花の香りに混じった。

「明日の会議の資料です。お昼の時に仰ってたじゃないですか、なにも用意してないし、できそうにないって」

 遠回しに要望を言っているようなものだとは思いつつ、俺は素直にそれを作成した。
 藤本さんの、年齢のわりにしわのない顔がくしゃっとなって薄い唇が弧を描いた。屈託のない笑顔を装った、計画の成功を喜ぶ笑顔だ。

「いやあ、助かるよ」
「いえ、そんなに濃いクマをつけた上司に言われたら誰でも察して手伝い始めると思いますよ」
「はは、優しいんだか辛辣なんだか」
「お気を悪くしてたらすみません」
「そんなことはないよ。ありがとうね」

 資料の紙を受け取る藤本さんの節くれ立った手は、このオフィスの乾燥のせいか少し白くカサカサと荒れていた。
 俺はこの手に何度か性欲の象徴を握られたことがある。

 あの時の藤本さんの手は、まるで女性を抱くように優しく、丁寧に俺の体を撫でまわしていた。やめてくれと願えば、その通りにしてくれたとは思う。でも、俺自身がそれを願わなかった。気持ちがよかったのだ。誰を抱くよりも、藤本さんに抱かれるのが身体だけでなく心臓のあたりが熱くなって、ありえないくらい気持ちよかった。

「中村くん?」

 ゆったりとして這うような声が、あの晩を思い出させて腰がゾクッとした。
 背もたれに深く体を預けた藤本さんが、今度は計画を企てているような微笑を浮かべた。まるで童話の中のオオカミみたいだった。

「……今晩、美味しいワインでも飲まないかい? 僕の家で、映画でも観ながら。この資料のお礼だよ。受け取ってくれるかな」

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