最後の共寝

・作

「──親友という関係は、今日かぎりで終わりになりそうだ」俺はルキを半ば無理矢理に抱きながら、そう思った。共に食事をとり、眠り、川沿いを散歩して暮らしていた、俺とルキ。だが、人間がルキを飼うことになった。それでも、俺はルキに会いに行った。それも今日までだと覚悟をして。

 忍び込むために開けた窓から、夜風が吹き込んできた。その風が、白いシーツの上で乱れる男の肌を冷やした。

 髪を乱して寝ころぶ男の潤んだ瞳に、自分の顔が映っていた。それはまるで飢えたケダモノみたいで、浅ましいなと思いつつ、思わず気が昂った。

「っ、あッ、ん」

 潤む瞳を細めて、媚びるような嬌声が発せられた。それには荒い息が混じっていた。余裕のなさが表れているのだろう。

 蕩けた表情をしていて、男だというのに異様な魅力を放っていた。

 その男、ルキは溺れるように体をくねらせ、枕に後頭部を埋めて快楽を享受している。

 いつもならピンと立ち上がっている耳は、与える刺激にあわせてピクピクと震えていた。

 唇は緩みっぱなしで、端からは唾液が垂れている。タラリと雫になって落ちるそれが、新品の首輪の溝に流れ込んでいた。

「もっと、やさしく、して、よぉ……っ」

 焦点の合わない視線で、ルキは甘く懇願した。

「かわいいなあ、ルキ。でも、ごめんな。俺はもっとその顔が見たいんだ……。これでも優しくしている方なんだ。わかってくれ」

 さっきルキと口付けをしたとき、俺は思わずその唇を離したくなくて、彼の首を握ってしまった。
 どこに触れればいいか、わからなかっただけだ。彼がまさか、あんなにいじらしい態度で俺を迎えるなんて、思ってもみなかったから。それを離したくなくて、捕えてしまった。

 あのときのルキの表情を思い出すだけで、後悔と興奮にぞくぞくした。
 今も眉根を寄せて喘ぐルキに、ぞくり、と背筋から性器にかけて荒々しい熱が走る。

 腰を進めれば、ぐぷ、と濡れた音がして、ルキの細い喉から甲高い声が漏れでた。

 そのまま奥を突いてやれば、彼は気持ちよさそうに喘ぎながら、侵入している肉塊を絞めつけた。

「んああぁ、あ、ぅ」

 濡れた唇から、白い犬歯が覗いている。声を抑えるように口を閉じられれば、その白い尖りは下唇の肉に、ふに、と埋まった。緩んだ口元が血を滲ませることはなさそうだ。

 ──親友という関係は、今日かぎりで終わりになりそうだ。

 ルキとは野良として出会った。出会った頃は、まだルキはひょろひょろとした体つきだった。一緒に飯を捕り、草陰に眠り、川沿いを散歩して暮らした。

 いっそのこと、その先の関係になりたい。いつしかそう思うようにもなった。

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