メイク・ラブ・クエスチョン? (Page 2)

「よし、今度こそ…」

 そう思って何度目かになる足を踏み出したとき、

「やめろっつってんだろ!」

 ドスの効いた男の声が静かな公園に響いた。

 誰か助けに入ったのだろうか。

 なんて思いは絡んでいた男たちの声で真実がわかった。

「コイツ男だぜ!」

「女の格好してるとかキモいんだよ!」

「うるせー! 俺様がどんな格好しようが自由だろうが!」

「クソッ…! 生意気言ってんじゃねえぞ」

「俺様とか何様だよ。つーか顔見たら相変わらず、綺麗だしヤッてもよくね?」

「なっ…ちょっと、やめ…んんっ」

 女装をしていたらしい男の甘い声が聞こえ、来た道を戻った。

 すると『ゴッタゴタ』の服を着ていた彼は、耳をいじられただけで膝を曲げへにゃへにゃになっている。

「お、耳が弱いのは本当みたいだな」

「ほんと可愛い声じゃん。コッチに目覚めそー」

「試してみんのもアリじゃね?」

「ちょっ、やめっ…あんっ」

 両方の耳を指や口で可愛がられる彼に俺はどうしたものかと頭を悩ませる。

 嫌がっているようにも見えるし、喜んでいるように見えるのが悩みものだ。

「待って、おれ、あの人に…とどけ、届け物…んっ」

「あの人って誰のことかなぁ?」

「そんな嘘言ったって無駄ですよ? 俺様お嬢ちゃん?」

「嘘じゃ…はぁ…やだ、も、もう…」

 俺に届け物がある、ということだろうか?

 いや、もしかしたらストーカーかもしれないし。

 ならやっぱり、このまま見捨てた方がいいだろう。

「た、助け…お姉さま、助けてぇ…」

 ボロボロと涙を流し始める彼の姿に、俺は立ち去ることをやめた。

 これはもう見捨てた方が後味が悪い。

 このまま放置すれば確実にヤられるだろうし。

 頭をかき回しながら近づくと、ため息をつきながら声をかけた。

「俺のツレになにしてんの?」

「あ?」

「それ、俺のツレ」

「あ…唯くんっ!」

 急に顔を晴れやかにした彼は二人を突き飛ばして、俺の腕に抱き着いてきた。

 さっきまで快楽に身を委ねていたくせに、さっきまで見せることのなかった怪力を発揮する。

「ちっ…行くぞ」

「ホモなんかキメーんだよ!」

 その『キメー』のを襲おうとしていた奴らが言うことではないだろ。

 なんて思いながら、なぜか俺の名前を知っている女装男子を引き離そうと腕を引っ張る。

 だけど彼は、ぎゅっと俺の腕にしがみついて離れない。

「おい」

「逃げるなんて酷いよ、唯くん」

「なんで俺の名前知ってんの?」

「俺様に知らないことなんかない」

 そういうと、彼はキッ…と俺を見上げた。

 睨んでも瞳は大きくお人形さんのようだ。これじゃあ女と間違えるのもうなずける。

 地声もそれほど高くないし女装していれば気づかない人の方が多いだろう。

「お姉さまの婚約者のくせに生意気な」

「…あー、婚約者の弟? あのキッツイ性格の」

「お姉さまはとてもお優しい! 厳しいときもあるが、それは相手を想ってのことであり…」

「それで俺に何の用? 届け物って?」

「ん? ああ、落としていったぞ。財布」

「は?」

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