Cold kiss
ケイには吸血鬼の恋人、ユーリがいる。連休に入る金曜日にはユーリにたくさんの血を与えていた。死なない程度の血液を与えたあとには、ユーリからケイはご褒美をもらう。冷たい身体を抱きしめながら、ケイは血と快楽を恋人に与える──。
仕事から家に帰り、俺は恋人に襲われた。
飢餓を起こした彼は玄関で俺のワイシャツを破る。
「待て、まっ…」
「待てない」
そう言いながら肩口をガバッと開いた銀髪の恋人は尖るキバで俺の首筋に噛みつく。
「ゆ、り…ユーリ──ああっ」
「んっ…」
ブツンッ…と穴が開く音を耳に響けば彼の食事が始まる。
噛まれた傷口から流れる血を彼が吸い始め、俺は抵抗をせずに彼の背中を抱きしめた。
このスーツは諦めて、また新しいのを新調すればいいと心の中でつぶやく。
俺の恋人、ユーリは吸血鬼だ。
出会ったときは高校で、それも学校の先輩だった。
幼い顔で漆黒の髪と瞳を持つ色白の美人な先輩。
だけど実際は銀髪に深紅の瞳が彼の本当の姿だった。
「んっ、ふぅ…んーっ」
「ユーリさん、ごめんね。こんなに我慢させて…」
朝早くに仕事があって家を出てしまったから彼に血を与えていない。
今も日付が変わろうとしていて、すでに真夜中だ。
たくさん吸われるのは困るが、詫(わ)びとしていつもよりは多めにあげたい。
そのとき、ため息が聞こえた。
「はぁ…。うぜぇ…」
「え? ゆ…んっ!」
ユーリさんに後頭部を引かれ、唇に冷たい感触が伝わった。
充満する血液の匂いと鉄のような味が口内に流れる。
俺の膝の上に座り、チュパチュパと唇を貪るユーリさんは可愛らしい。
「…ケイ」
「なんですか?」
「明日は休み?」
その確認に俺はそっと微笑んだ。
恥ずかしさと苦しさ、辛さなど…いろんな感情が混ざった表情を向ける彼の頬を撫でる。
「はい、休みです。お腹いっぱいになって」
それは俺とユーリさんの合図。
金曜日の夜に『ご褒美』の時間がやってくる。
*****
「ぅん、あっ、まっ…やああっ」
俺の首筋に噛みついていたユーリさんの喘ぎ声が耳に響く。
俺のペニスを下のお口で咥えながら、上のお口で俺の首から食事をする。
お腹が空いてしょうがないくせに、快楽には弱くて彼の中を強めにゴチュゴチュと突けば気持ちよさそうに喘ぐ。
「ユーリさん、ほら血がもったいないよ」
「うっん…、うる、うぅんん…」
後頭部を押して顔を首筋に近づければ、ヴァンパイアの性分が出て血液を吸い始める。
血を吸われるのは痛いし具合が悪くなるけど、それよりも一生懸命に食事をする彼が可愛くて…。
「ユーリさん、動いていい?」
「ッ…あ、だめっ、だめっ!」
ブンブンと頭を左右に振るユーリさんにクスッと微笑みかけ、また食事をする彼の頭を撫でた。
「いいですよ。いっぱい、いっぱい飲んでください」
平日は最低限の食事しか与えてあげられないから、空腹で辛かったと思う。
だけど貧血になってもいいように金曜日の夜だけはたくさんあげる。
俺が死なない程度まで。
「ケ、イ…も」
「ん?」
「もう、ちょっとだけ待って…、ごめ、んね」
首にキバをたてながら血液をすする彼は、自分の中に入る俺のペニスを見下ろす。
ペニスの根本を撫でたユーリさんの指に、ガマン汁とローションが混ざったねばついた液体が、銀の糸を引きながらつながった。
その姿に興奮を煽られるが、ガマンガマンと彼の腰を抱き寄せるだけにする。
「大丈夫ですから、ちゃんと食事して。その後にたくさんご褒美をもらいますから」
俺へのご褒美は彼とのセックス。
ユーリさんに血を与えながらだと、今いれている一回で終わってしまうが、俺への本当のご褒美は土曜日の夜か日曜日。
貧血が回復してからが俺へのご褒美タイムだ。
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