愛おしきは年上の恋人~落としたばかりの先輩刑事と道場で~
伴沢直己(はんざわなおき)は生活安全課の新米刑事だ。一ヶ月前にようやく口説いて落とした先輩刑事の諸田英二(もろたえいじ)と柔道の乱取りの稽古をしていたが、その稽古が落ち込んでいる自分のためだと知ってつい抱き締めてしまう。稽古で熱くなった身体に興奮し、直己は思わず先輩刑事を壁に押しつけて柔道着を脱がしていく。
「待て、伴沢……!」
声を掛けられても、すでに背負い投げに入っていた体勢は変えられなかった。
どうにか掴んだ襟は手放さずにいたものの、諸田英二の身体は綺麗な弧を描いて畳に叩きつけられている。
誰もいない道場に響き渡った大きな音にびくつきながら、伴沢直己はパートナーを組んでいる七つ年上の男を見下ろした。
「あの、……諸田、さん」
激しい乱取りの稽古に息が切れている。
呼吸をなだめながら声を掛けると、刑事歴はすでに十年以上、逮捕術にも優れている刑事は顔をしかめながら直己を見上げた。
「お前な、何度も、言わせるな。投げ技は使うな」
「すみません、その、つい身体が動いちゃって。大丈夫ですか?」
生活安全課に配属されて一年、こうしてたまに乱取りをしているが、逮捕の際にかすり傷一つ負うこともない諸田はなぜか柔道で直己に勝てない。
ついで市民を投げたら降格ものだぞ、とぼやきながら立ち上がり、諸田は打ち付けた腰を軽く撫でた。
「まったく、馬鹿力め。それで頭はすっきりしたか?昨日、若いやつにいろいろ言われてへこんでいただろう」
「……――」
柔らかい笑顔で笑い掛けられて、直己は先輩刑事を見つめて息を止める。
市民への柔らかな物腰、誠意のある態度、見本としている刑事の気遣いに嬉しくなり、笑いながら諸田の身体をぎゅっと抱き締めた。
「諸田さん、ありがとうございます。……おかげさまですっきりしました」
「それ、は……、よかった」
諸田はぎこちなく視線を逸らす。
口説いて口説いて口説いて身体の関係まで持ち込んでまだ一ヶ月、お堅いところのある人だったのでまだ慣れないらしい。
改めて抱き締め、直己は柔道着の下で熱をはらむ恋人の身体に思わずのどを鳴らす。
諸田の体つきは刑事らしくちょっと厳ついが、なぜかでん部がむっちりとしていて胸も服の上からわかるほどに大きい。
直己は抱き締めた身体の肉付きにのどを鳴らし、そろっと視線をさ迷わせた。
幸いなことに今は終業後だ。
この柔道場へ来る物好きはいないだろう。
直己は身を屈めてうっすらと汗をかいた首筋にキスし、諸田の黒帯をするっとほどいた。
「ちょ、は、はは伴沢!お前、ここをどこだと」
「柔道場、そして諸田さんは俺の恋人。……気遣ってくれた恋人とセックスしたいと思うのは悪いことですか?」
「こ、こい、セ、セック、ス、って、お前、待て待て、ダメだ、お前、今は」
「今はもう時間外で誰も道場には来ないだろうし、前にしてからもう二週間ですよ。感じすぎて辛そうだったから時間を置いてと思ったけど、諸田さん思ったより頑丈だし、中で感じると癖になっちゃうでしょ?」
「!」
腕の中で愛おしい身体がびくっと跳ねた。
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