事故物件と欲求不満幽霊
就職を機にいい加減一人暮らししろと実家を追い出された悠介(ゆうすけ)。住む家を探して不動産屋に行ったはいいが、どこも家賃は高い。困った悠介に不動産屋が勧めてきたのは不自然に格安なアパートであった。どうやら事故物件らしく、幽霊が出るらしい。お金に余裕のなかった悠介は早速引っ越しを決め、そのアパートに引っ越したのだが……!?
「困ったな……」
悠介は不動産屋で困り果てていた。就職を機に一人暮らしをしろ、と実家を追い出され、住む家を探しに来たのはよかったのだが何せどの物件も家賃が高い。新入社員の悠介が払うことのできる額には限度がある。
「条件は良くなくてもいいので、もっと安い物件、ありませんか?」
「もっと安い物件……ですか……」
悠介の要求に不動産屋の職員も困っているようだった。それはそうである。取り揃えた安い物件すべてが、高いから無理だと言われたのだ。これ以上どうしろと言うのだ、という表情が隠しきれていなかった。しかし、何かを思いついたらしく不動産屋の職員はバックヤードへと資料を探しに行き、しばらくしてから物件情報が入っているのであろう、一冊のファイルを取り出して来た。
「お客様、こちらの物件ならお安く紹介できますが……」
「本当ですか!?」
その言葉に悠介は飛びついた。急いで職員の持ってきたファイルを覗き込む。そこには今まで紹介されたどの物件よりも広く、設備も整っている部屋が載っていた。そして記載されているのは今まで紹介されたどの部屋よりも破格の値段であった。
「なんだ、安くていい部屋あるじゃないですか!ここがいいです!俺、ここにします!」
「お客様、その……この部屋なのですが、いわゆる『事故物件』というものでして……」
「事故物件?」
「物理的に問題はないのですが……お客様が契約する際に心理的に問題を覚えるような物件のことでございます。この部屋は……その、以前の入居者の方がお部屋の中で亡くなられておりまして……」
「でも今は綺麗で普通に生活できるんですよね?」
「は、はい」
「じゃあ問題ないじゃないですか!」
「ですが……この部屋にはですね……」
「いいです、大丈夫です!」
「……少し別の問題もございまして」
「俺、ここに決めます!契約しますから!」
きちんと説明しようとする職員の言葉をさえぎり、悠介は部屋を無理矢理契約してしまったのであった。
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