それはお前だけじゃない
「ずっと、こうしたかった――」彼女に振られた幼馴染の優斗を慰めるため、部屋で酒を飲みながら話を聞いてやっていた蓮。しかし話の途中で優斗は突然怒り始め、蓮をベッドに押し倒した。嫌がる蓮に優斗は無理矢理、触れていく。
「……だから、むやみやたらと手を出すんじゃないと言うんだ」
「いやあ、大人しそうな子だったんだけどね……イテテ……」
優斗は涙目になりながら、真っ赤に腫れた頬に触れた。
カーペットに座ってローテーブルにぐったりと身体を倒し、泣き言を言う。
そんな幼馴染に、蓮は呆れた目を向けた。
「大人しい相手ならいいというわけじゃない」
「……もういいじゃん、はい、かんぱーい」
「……乾杯」
優斗が手土産に持ってきた安い缶チューハイをカツンとぶつけ合う。
蓮とは違って、優斗はゴクゴクと豪快に酒を喉に流し込んだ。
蓮はヤケ酒に興じる優斗を見て、重い溜息をついた。
「蓮は彼女作ったりしねえよな?」
「……まあ、予定はないな」
「あーよかった! 蓮に彼女なんてできた日には、俺は……うぅん……」
優斗の飲んでいる缶チューハイは、アルコール度数が高かったらしい。
一気飲みしたからか、すでに酔いが回って顔が赤くなっていた。
優斗がこうして酒を土産に蓮の部屋を訪れるのも、大学に進学してからは珍しくない。
蓮は毎回、『とりあえず付き合う』というのはやめろ、と言っているが、優斗は蓮の忠告を聞いた試しがなかった。
「蓮はなんでこんなモテるんだろ……はあ……」
「……?」
優斗はテーブルに突っ伏して、今にも泣きだしそうな顔をした。
そんな優斗の言葉に蓮は内心首をかしげる。
優斗の方こそ、すぐに次の彼女ができるほどモテるのに。
蓮は高1のときに彼女が1回できたくらいで、それきり彼女ができたことはない。
そして唯一できたその彼女とは、振られるというかたちで別れた。
「俺が女にモテてるところ、見たことあるか?」
蓮はそう笑って茶化すように言った。
すると優斗は、突っ伏していた体を急に起こして大声を上げた。
「いっつもモテてんだろうが!」
「ど、どうした急に……」
「俺がいっつもどんな気持ちであいつらと……」
「あいつら?」
「……なんでもねえ!」
優斗はそう言って、再びテーブルに突っ伏した。
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