僕の優しいヤクザ様

・作

若頭の部屋に監禁される姫は若頭、佐山の愛人。彼に『姫』と呼ばれ、愛される日々を過ごしているが、優しいセックスが不満でしかない。乱暴にされたい姫は今日も佐山へと『優しくしないで』と頼むが、佐山はそれを拒んで…。今日も姫は、若頭に愛と優しさを注がれる。

 この世界は理不尽だ。

 なんて思っていた時期もあったなぁ。

 親に売られてヤクザの世話になって早五年。

 借金返済のために身体を開いていたころが懐かしい。

 むしろそっちのほうがマシだったかも。

「姫、ただいま」

 窓辺の棚に座って雪景色を眺めていると、ふすまが開いて朝日が差し込んだ。

 視線を向ければ、長身の男がにこやかな表情で部屋に入ってくる。

 足を畳みの上に下ろせば、身に着ける浴衣がはだけて、ひんやりとした風が肌をなぞる。

 僕に近づいてくるのは、藤代組ナンバー2の佐山さん。

 27歳で若頭という役目を持つエラい人。

 この部屋は佐山さんの自室で、僕は彼の愛人だ。

 『姫』なんて愛称も、僕をこの部屋に監禁したときに呼び始めた名前。

 そもそも僕は藤代組に身を売ったから、この人にだって『商品』として抱かれていた。

 知らない男の人たちの下で喘ぐし、組の人のストレスのはけ口にだってなった。

 なっていたはずだったんだけど、なぜか佐山さんに気に入られて、借金返済も若頭命令で免除。

 気づけば『愛人』ポジションゲット。

 でもこの人とのセックスは優しくて嫌いだから、商品のままのほうがよかったとも思う。

「姫」

 佐山さんの手が頬に触れて上を向かせられると、「おかえりなさい」と口を開く。

「イイ子にしてた?」

「いい子もなにもないですよ」

「襲われたりとかは?」

「してませんよ。…あんな目に遭うってわかってて襲う人なんかいません」

 それは僕がこの人の愛人になってすぐのこと。

 佐山さんのいない間に組の人が僕を抱いたことについてだ。

 商品だった僕は、組の人に求められれば自然と受け入れる。

 だけどそれは大きな間違いだった。

 そのことを知った佐山さんは、その日のうちに彼を『消した』から。

 それ以来、僕を襲おうなんて人はいない。

 この部屋に近づくことすらしない。

 食事を運んでくるのは、佐山さんの腹心の兄貴分だけ。

「ん…」

 求められるまま佐山さんの首に両腕を回すと、優しい口づけがふってくる。

 最初は重ねるだけの口づけ、それから深めて舌を絡ませる。

 この人とのキスに俺はなにもしない。

 されるがまま、求められるまま、舌を伸ばして遊ばせるだけ。

「あっ、んんっ…」

 佐山さんの熱い舌が僕の舌を絡め取り、唾液が舌を伝いながら口内に流れ込む。

 それを飲み込みながら彼の口づけに答えた。

 シュルッ…と音をたてながら帯をほどかれて、大きな手のひらに身体を撫でられる。

 脇腹から腰へ、腰から太ももへと手のひらが動く。

 そして彼を受け入れるために準備したアナルへと指を這わせて、ゆっくりと指を挿入した。

「佐山さん、そんな優しくしないでって…あぅ」

「酷くされたいって思ってるうちは優しくする」

「っ…じゃあ優しくしてって言ったら?」

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