火遊びにハマる夜 (Page 3)
こういうときラブホテルは便利だと改めて思う。
なんの準備をしていなくても、必ずアメニティとしてローションとコンドームは常備されているからだ。
仰向けに寝転んだ識は開いた脚の間に入り込み、個包装のローションの中身を掌に塗り広げていく明人を見た。
浮気とは、どのラインからをさすのだろう。
知り合ったばかりの年下の男と身体を繋げようとしている自分の行動をかえりみて、密かに首を傾げた。
さほど罪悪感はない。
恋人とでは得られずにいた快感は新鮮で、寧ろ欲は高まる一方だ。
「ん…」
双丘の間に濡れた指が触れる。
割れ目に食い込んだ指がその奥の窄まりを見つけ出し、滑りをともなって忍び込んできた。
体内に入り込んだ指は浅い位置で粘膜を擦るように動いた。
「キツいっすね…」
「久しぶり、だから…ん、ぁ…けど、気持ち、イイ…」
潤沢な滑りのおかげで抵抗なく行き来する指が徐々に深く埋められていく。
いきなり奥まで突き入れるのではなく、少しずつ解していくようにして小さく動く明人の指。
識は腰を浮かせたり、爪先を伸ばしたりと忙しなく動いた。
「は、ぁ…ん、ぁ…」
次第に柔らかくなる内壁は明人の指を誘うようにうごめいた。
一度引き抜かれた指が、質量を増して今度は奥まで入り込む。
出し入れしたり、指で中を突いたりと、優しい手付きで中を愛撫されていくうちに、くたっていた識の欲望は熱を取り戻し二人の身体の間で揺れていた。
「もう、十分…んぁ、だから…」
淫らに腰をくねらせては喘ぎ、識は潤みのこもった眼差しを向ける。
「――っ」
息を詰めた明人の指が引き抜かれ、少しの間が空く。
明人がコンドームの包装を破り、装着を済ませるまでの間に識はうつ伏せに体勢を変えて静かに呼吸を整えた。
「じゃ、いきますよ…」
腰骨の辺りを掴む手に合わせて膝を立て、腰を持ち上げる。
四つん這いになる識の背後にピタリと張り付くようにして、明人は腰を押し当ててきた。
「ん、ぁ…」
蕾にあてがわれた楔(くさび)が押入ってくる。
反射的に背を反らし、識は詰まる息を吐いた。
「やば…すっげー締まる」
「おまえ、デカすぎ…っ、ぁ、ぅ…」
識の狭い内壁を押し広げて満たすもの。
わかってはいたが、少々キツイ…でも、気持ちのいいところ全部を擦るような圧迫感は癖になりそうだ。
「は――っ、余裕ない」
ごめん、と謝罪を口にした明人が力任せに貫いてきた。
「うぁっ、待…っ、あっ、あ、ん…ぁっ」
容赦のない律動に上擦った声が漏れた。
ベッドが軋んだ音を立て、力強く穿たれるたびに、繋がりから全身にぞくぞくとした快楽が駆け抜けていく。
「あっ、は…」
荒々しくも着実に識を乱す明人の熱。
奥を突かれる度に、識の男性器からは押し出されるようにして蜜が零れ、シーツに染みを広げていた。
こんなに気持ちイイなんて…軽い気持ちで声をかけたのを後悔したくなるほどに激しい快楽が識を襲う。
ほんの火遊びのつもりだったのに――。
「ぅ、ぁ…く…っ、も、イキそ…」
「何回でも、どうぞ…」
識が限界を伝えると同時に律動のテンポが速まった。
「あっ、あ、ぁっ…ん、あ――っ」
脳髄までもが痺れるような快感に抗いもせずに、識は追い立てられるままに白濁を散らした。
「は、ぁ…待…っ、やめ…」
明人が動きを止めたのは射精の衝動で識が全身を強張らせた瞬間だけだった。
一息つく間もなく揺さぶりが再開し、識は戸惑いと止まぬ快楽の波に翻弄されて何度も首を横に振った。
「まだまだ、これからっすよ…」
「そん、な…ぁ、ん…ああっ」
無情な一言に、目を見開いた識はただ喘ぐことしかできず――結局明人が満足するまで、数えきれないほどに識はイカされ続けた。
*****
「ヤッてから言うのもアレなんすけど…」
休憩時間終了まで残り二十分。言葉通り精も根も尽き果てた識を抱き抱えて寝そべる明人が切り出した。
「その、彼氏さん、大丈夫っすか?」
「あー…」
と、識はしばしの間考え込み、心を決める。
「…明人は、今後どうしたい?」
答え次第だと、識は聞き返した。
「識さんと付き合いたいっす」
正に即答――識は静かに笑い、答えの代わりに顔を寄せてキスをする。
「よろしくな」
別れの連絡は、ピロートークのあとでいいだろ…。
Fin.
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