年下の幼馴染は犬ではなくオオカミだった
湊の20歳の誕生日。研究室にいる裕也におねだりをしに姿を見せた。いつものかわいいおねだりかと思っている裕也に湊はいきなりキスをする。そして、秘めていた思いを自分の20歳の誕生日にゆがんだ形で告白する。弟のようにしか思っていなかった裕也はどのように思い、湊に向き合うのであろうか。
「裕也兄ちゃん、20歳になったからお願い聞いてよ」
放課後の研究室に、年下で幼馴染の湊(ミナト)と俺の二人きり。夕日の明かりが湊の童顔な顔を照らしている。
昔から、この瞳で見つめられると甘やかしてしまう。例えていうなら、犬がご主人様に”遊ぼう”というかのようにお座りをして見つめられてる感覚である。
いつものと同じようにおねだりをしてくる。高校に合格のときは遊園地に連れていってとねだられたし、大学合格のときは時計をねだられた。
高校合格のときにねだられた遊園地では、大学院を卒業した直後だったのでいろいろ余裕がなかったが、今は30歳で助教という立場で、実習も担っている。今回は、金銭的にも余裕がある。
「なんだ?ほしいものでもあるのか?高いものはだめだぞ?」
笑いながらいうと、湊が笑みを浮かべてこちらに迫り、くいっと俺のネクタイを引っ張り唇をあわせてきた。
「んっ…!!ふっ…!!まっ、ちょっとまて湊、これは!?」
俺はすぐに湊と離れようとしたが湊の力は意外に強く離れることができなかった。
「裕也兄ちゃんをちょうだい??だめかな??」
子犬のような潤んだ目で見上げながらねだってくる。
いつもこの目にやられて世話をしていた。可愛さは昔も今も変わっていない。しかし今回は流されてはいけない。俺はノンケだ!!
「ちょっとまて!!そんなことをしても俺は流されないぞ!!」
ネクタイにあてがわれた手を振り払い、後ずさる。しかし湊は逃がすものかと迫る。
「僕はね、20歳になるのをずっとまってたんだよ。成人になるまで、兄ちゃんに大人だって認めてもらえるまで」
壁に追いやられ逃げ場がなくなる。ネクタイを引っ張られた反動で足元が崩れ倒れてしまった。起き上がろうとすると湊に背中を床に押し付けられる。
「兄ちゃんと約束したよね?僕が大人になって、兄ちゃんが独身だったら一緒に暮らしたいって。僕、頑張ったんだから」
俺のネクタイを外して両手首を縛る。うっとりする湊の瞳の奥には獣がいたような気がした。
「兄ちゃんが独身でいるように、つきまとう虫は追い払ったり、お見合いの話もなくしたり大変だったんだからね。彼女ができそうなときだって、僕が女装して追っ払ったんだから」
白く長い指で、スーツとシャツのボタンを外していく。あらわになった俺の胸板に頬をすり寄せた。女装って…したのか??似合わなくない。むしろ、そこそこ美人になる顔立ちなので説得力がある。
「僕ね、兄ちゃんのこと好きだったんだよ?小さいころからずっと。もっと僕のことを見てほしくて中学や高校も同じ部活に入ったんだ」
愛おしそうに胸板から脇腹にかけて指をつたわせていく。
「ひやっ…!!」
少し冷たい指が脇腹を確かめるようにしてなぞりまた胸板に戻る。
「いい子だから、こんな冗談止めないか?」
「冗談じゃないよ?兄ちゃんと長く過ごしたいから母さんに頼んで家庭教師もしてもらったし。同じ大学にも進学したんだよ」
「そんなことどうでもいいけど、教授!!そうだ、教授が帰ってくるからやめよう!!なっ!!」
なんとか思いつくだけのことを口にしたが、湊のほうが上だった。
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