僕はそれでも番犬を愛でる (Page 2)

「坊ちゃんは朝勃ちも知らねえのか」

 やわやわとシャツ越しに性器を触られるレイは、あくびをしながらそう言った。

「うーん。知ってるけど、あんまりならないから」
「……坊ちゃん、本当に男か?」

 そう言われたアランはムッとした表情をし、手の中の張りつめる肉棒をギュウっと握った。レイは興奮とはまた違う反射で性器と腰が跳ねてしまった。

「失礼だな。僕はれっきとした男だよ。それより、坊ちゃんって呼ぶのもよして」
「わかった、わかった。悪かったから、それ以上力入れんなよ」
「言葉づかい」
「それ以上力を入れないでくださいっての」

 アランはしばしその言葉の真意を確かめるようにレイの顔を見つめた。そして窓の外の朝日のように微笑んで、手の中のモノを解放させ、背中からベッドに倒れ込んだ。アランの顔のすぐ横には、レイの灰色の毛束の尻尾がある。
 仰向けで横になったアランの体は、下半身の様子を見せつけるも同然だった。

「レイ、きみのせいで僕まで興奮しちゃったよ」

 緩やかに瞬きをして、まつげを伏目がちにしてレイを見つめる。

「ふうん」
「もう。機嫌を直しておくれよ。しつけのなってない、僕のかわいいレイ」

 アランはそう言いながら、目の前の灰色の尻尾の先を撫でた。パタン、とアランの手を振りほどくように尻尾が上下し、しかし撫でることを強要するようにアランの手に寄り添った。アランは「ふふ」と微笑をこぼしてから、その素直じゃない尻尾を先ほど性器を揉んだようにしてやわやわと撫でた。尻尾の先を、骨の通った中央部を、そして付け根を、愛撫するように撫でた。

「今日の俺の朝食は、王子サマ、なのか?」

 レイはアランの方を振り返り、ギラリと光を宿した視線を突きつけた。

「味見程度だけだよ。メインディッシュは夜まで我慢ね」

 その言葉が言い終わる前に、レイはアランに顔を近づけ、首や頬や額に口づけを落とした。触れるようなキスと、味見のようにペロリとひと舐め。レイの武骨(ぶこつ)な手が、整えられた髪を乱すようにアランの頭を抱えて、捕食するように口を交わした。アランはそれを受けいれ、愛犬を愛でるように背中をさすったり、頭をわしわしと撫でたり、ピンとした耳を指でもてあそんだ。

 本当に食べられてしまいそうだ。

 アランは唇や舌を甘噛みされながら、番犬の鋭い眼光を慈しむ(いつくしむ)ように見つめ返した。

Fin.

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