春と夏のあいだに (Page 5)
「やば…っ、もうダメ、もうイっちゃう…っ」
「…ん、一緒に、イキましょ…っ?」
問いかけにこくこくとうなずく彼は、まるで小さな子どものように愛らしい。
腰のスピードを一気に速めてやると、彼の口からひっきりなしに喘ぎ声が漏れた。
あどけなく開いたその唇を引き寄せ、貪るように口づける。
舌を絡め取りながら、最奥をガツンと突き上げてやると、締め付けがより一層強くなった。
「…んんぅ…っ!んん…ぁっ!」
唇の端から吐息を漏らしながら、彼は果てた。
俺もその締め付けに呼応するようにして、彼の中に白濁を打ち付ける。
二人のシャツが、彼の震えるペニスから放たれた精液で濡れている。そんなこともお構いなしに、俺たちはもう一度、ソファーに体を沈めた。
朝起きると、そこに彼の姿はなかった。
テーブルの上にはいつの間にかきれいになった俺のスーツと、オートロックだから好きに出かけてねという書置き、そして缶コーヒーが一本。
夢だったんじゃないか、と思うほどの体験。でも、体に残った酒の匂いと彼の甘い香水の匂いが、昨晩の出来事が嘘でなかったことを証明してくれていた。
「…って、まずい!電車の時間!」
急いで準備をして、彼の家を飛び出る。幸い、駅近なだけあって、なんとかいつも乗る電車に乗ることができた。
改札をすり抜け、電車のドアが開く。今日もまた、すし詰めの満員電車。一気に現実に引き戻されるような気がして、思わずため息をついた。
また、彼に会うことはできるのだろうか。
生憎、まだ火曜日。楽しい週末は、まだまだやってこない。
肩を落としたまま、なんとか職場にたどり着く。ため息交じりにデスクについて、カバンを広げた。
「おーい、中島。ちょっと来い」
いきなりの上司からの呼び出し。勢いのよい返事だけして、力のない駆け足で上司のもとへ向かった。
「なんでしょう」
「ああ、ちょっとフロアの案内頼むよ。今日から、キャリア採用で新しく就任になった伏見さんだ。説明しっかりよろしくな」
「あ、はい。中島です、よろしくおねが……え?」
顔をあげた先にいたのは、間違いなく。間違いなく、ハルキさんだった。
ニコッと笑った表情は、昨日の夜の思い出そのまま。上司から見えないように、ハルキさんの手のひらが俺の手のひらに伸びてきて、そっと指先を撫でる。さっきまで憂鬱だった空間が、一気にカラフルになったように見えた。
「中島さん、よろしくお願いします。伏見です」
悪戯っぽい笑顔が、日差しに照らされて眩しい。俺は、まだまだこの人に振り回されることになりそうだ。
Fin.
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