恋人が営むバーでした甘くて塩辛いキス (Page 5)

「はぁっ…はぁっ…」

美琴の乱れた息遣いが静かに響く。

呼吸の回数が重なって呼気の音が安定すると共に、内壁もオレの形に馴染み始めて締め付けが和らいできた。

身動きが取れるまでに淫靡な拘束が解けたところで、下腹部を退いて熱い肉壁を擦る。

1か月ぶりにつながれたからか。

それとも仕事中の美琴を犯しているという、新鮮で背徳的なシチュエーションにか。

自覚している以上に高揚しているようで、ゴム越しに壁が擦れただけで欲塊がまた質量と硬度を含んだ。

「美琴…本当に、遠慮できないよ」

一言そう宣言してから返事を聞くより先に、挿入物をギリギリまで抜き出して緩急的なリズムを刻んだ。

中で潤い続けるローションの音や肌同士がぶつかる乾いた音。

ガタガタときしんで床を叩くスツールの脚。

カシャカシャン、カランカランとテーブルに置かれたグラスや器具が揺れて動く涼し気な音。

それらは制御できず、容赦ない律動の激しさを物語っていた。

「ひっ、あっ…あっ」

強烈な摩擦を鮮明に感じ取っているようで、美琴の口からは短く甲高い艶めいた声が零れる。

その喘ぎは火に油を注ぐように、未だ鎮まることを知らない欲情へ直接的に刺激した。

動き始めて間もないのに、まるでラストスパートのように下腹部を強く打ち付けて最奥を突き上げた。

「あっ…はっ…よかった、です」

無我夢中で快楽を貪っていると、また美琴が顔だけ向けてこっちを見てきた。

その表情はさっきまで違い、声と同様に穏やかで安心しているようだった。

何がよかったのか、聞く余裕も間もなく解放を目指して下半身を動かし続けた。

「あっ…あぁっ!」

最奥へ強く先端を打ち付けると、美琴の中が前触れもなくキュッと締まってうねる。

最初より潤いと熱を濃密に含んでいて、陰茎の薄い皮膚もそれを敏感に感じ取るようになったからか。

挿入直後のように至高の悦びを我慢することも、気をそらすこともできなかった。

締め付けられて律動を切られてうっとり、とろけるような熱さを味わいながらゴムの中で欲望を吐き出した。

「いつもの洋司さんに、戻って…今日も、貴方を慰められて」

まだぼんやりする頭で眼下を眺めていると、不意に体を引き寄せられて美琴の顔がグッと近付いた。

「早く忘れて、くださいっ…貴方を見てくれない、彼のことなんてっ…毎回、慰めるのも、楽じゃないん、ですから」

語尾を微かに震えた声で紡ぐと、美琴は後頭部に手を回して一層顔を近付けると、唇で再びオレの呼吸を塞いだ。

その口付けは、うだるように熱くて濃厚だったが、少しだけしょっぱかった。

(ゴメン、本当は…本当は…)

熱く塩辛い味は心臓をギュッと握り潰すように、オレの胸に鮮烈な痛みを与えた。

Fin.

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