ウリ専ボーイのレイ君 (Page 3)
「なーんか愛想悪いなー。レイ君は?」
「はい?」
「名前だよ、な・ま・え。君の本当の名前」
「…出禁になったあなたに教える義理はないです」
腹が立ってきた。なんなんだ、この御曹司さまとかいう男は。
「何その態度」
このひとことで相当甘やかされて育った馬鹿御曹司なんだと察することができた。
相手にするだけ無駄だと思った僕は立ちあがり、その場を立ち去ろうとした。
「おい、ちょっと待てよ」
いや、待ちません。無視を決め込もう。関わりあいたくない。
と、すれ違った瞬間だった。
「うっ…あっ…!」
突然、後ろ手に口と胸元を腕で抑え込まれた。
「ここは店じゃないだろ? ちょっと付き合ってよ」
*****
来年使われる予定の新設されたキャンパスにある多目的トイレに無理やり連れ込まれたうえに鍵まで掛けられた僕は焦った。
まず人通りなんてないに等しい。
「てかさー、さっきから気になってたんだけど、チラチラ見えてる腕の傷、何?」
「えっ…」
慌てて左手首をシャツの袖で隠したがもう、時すでに遅しだった。
「もしかしてリスカ?」
「…………」
「うっわー、やっぱりそうなんだ! 男のくせしてリストカットとか女々しー」
馬鹿にした笑いでこの馬鹿御曹司は言った。
「これは…僕の癖みたいなもんだ」
僕は開き直った。ここで嘘なんか付いたら嘘だ、違う、の押し問答が永遠に続くだろうから。
「…かわいそうに」
今までの態度とはまるで別人のように悲しげな顔を向け、僕に言う。
「お金に困ってるの?」
なんだこいつ、と思った瞬間僕は優しく抱きしめられていた。
「ちょっと…やめてください」
「これくらいいいじゃん」
「僕は別にかわいそうでも貧乏でもない。離してください」
強めに身体を押して引き離す。
ふと馬鹿御曹司さまの顔を覗くと目に涙を浮かべていた。
ますますよくわからない人だ。
「自分に素直になれないんだね」
「あんたは素直に生き過ぎだと思うけど?」
「…なんか気に入ったわ。キスしていい?」
僕が答える間もなく無理やりキスをされる。
舌を押し込まれ、唾液が絡み合う粘着音が響き渡る。
「あっ…うっ、やめ…」
やがて下半身をジーンズ越しに触られる。
こんな状況でも反応してしまうのがウリ専の職業病といったところだろうか。
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