ウリ専ボーイのレイ君 (Page 4)
もう数分は経っていると思う。なかなか口を離してくれない。
…耳の下が痛い。
「…なーんてね」
ようやくキスの束縛から解放されたか、と一安心していたらまた意地の悪い馬鹿御曹司に戻っていた。
その姿はまるでカメレオン俳優のように別人だ。
目に涙を浮かべていたあの姿はなんなんだったんだ。
「俺の演技にだまされなかった人、初めてだわ。みーんな落ちるんだけどね」
…ああ、やっぱりそんなことかと思ったよ。
「それで? そこまでして僕とセックスしたいの? 出禁くん」
“出禁くん”という単語にカチンときたのか、耳元で「おい、後ろ向けよ」と低い声でささやかれる。
…なんだかもう、めんどくさい。
大人しく自ら壁に手を突いたあとジーンズのベルトに手をやり、下半身をありのままにする。
「あっ! ああっ! ああああっ!」
いきなり挿入されるのは慣れるようで慣れない。
当て付けのように激しくピストンされるたび壁にぶつかる物音も激しくなっていく。
いつもの癖で気持ちよくもないのに声を出してしまう。
「うっ、ああ…んっ!」
「たっぷり中に出してやるからな」
「出してぇ…あぁ…! あっ! 出てるぅ…」
じんわりと広がる生暖かい感触に目を閉じ、じっと耐える。
「はぁっ…」
「んっ…満足した? もう帰らせてよ…」
なんだか情けなさ過ぎて涙が出て来た。
その姿を見られたらまたからかわれると思った僕は背中を向けたまま急いでジーンズを履く。
「バイト、遅れるから…」
「行くな!」
突然大きな声で言われ、後ろから優しく抱きしめられる。
「お前はウリ専向いてないよ。やめちまえ!」
「…は?」
「いろいろ困ってるなら空き部屋なんてクソほどあるから家に来てよ!」
またカメレオン俳優になったのだろうか。
にわかには信じがたい。
「ねぇ! お願いだ! このままだとお前の心が死んじまう!」
Fin.
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