彼の危険なパンドラの箱 (Page 2)
「梓乃さん、俺のお酒を飲んでくれませんか?」
「え? あぁ、いいけど…」
「オリジナルのカクテルを作ったんです。ぜひ梓乃さんに試飲をお願いしたくて」
カウンターに戻った彼は俺に視線を向けてニコッと笑い、カクテルの準備を始める。
触れられた肩に手を当てると、ドキッと胸が騒いだ。
ひょろっとした見た目のくせに、あんなに力が強いなんてギャップありすぎ。
あぁ、でもタチ専なら力があって当然か。
「しぃちゃん、鹿目くんには優しいよね」
「こっちの世界じゃ珍しいくらい純粋だからかも。ノンケ相手にしてる感じ」
実際、ゲイだって知ったの今日だし。
「まぁ彼は遊んだりしないからね」
「へえ? パートナー持ち?」
「今はまだ一人。一途な子でさぁ、ここで働き始めたのも目的があってだからね」
「へえ…。相手は常連客なのか?」
「そうね。その人のことが大好きで大好きで、ずっとストーカーしてた。だから見かねて雇ったの」
マスターは意味ありげに笑って、グラスを拭き始めた。
「しぃちゃん、ごめんね」
「ナニ、突然…」
「んー? しぃちゃんを置いてパートナー作っちゃったから」
「そんなことかよ。先輩にはあのときから世話になってんだ。恩人の幸せを願うのは当然だよ」
「ありがとう。──ほんと、ごめんね」
どういう意味かわからず、聞き返せば「なんでもない」と笑われた。
「梓乃さん、どうぞ」
「ん? ああ、ありがとう」
綺麗なお酒が目の前に出された。
甘い香りと甘い味が口内にまとわりつき、気づけば俺の意識は遠く離れていた。
*****
ぐち、ヌチッ…。
変な音がする。
何かが身体の中に侵入する感覚がする。
「…はぁ、ふっ、んぅ…!」
「梓乃さん、きもちぃ?」
「…はぁ、ぁあぅ…あっん!」
肌をなぞる冷たい手のひら、お腹の中をかき回す細長い指。
それから甘く柔らかい匂い。
「ふぅ、ぅあ…、あっ、ああッんんっ!」
やってくる快感と同時にまぶたが開いた。
「ケホッ…はぁ、はぁ…ぁん…?」
お腹を指でなぞればヌルッとする。
それをすくいあげるようにして、顔の方まで手を持ってくると白いものと透明なものが絡みついていた。
精液と、馴染みのあるローション。
「…え?」
店で飲んで、それからどうしたっけ。
誰か誘った?
それでなんで俺がベッドに…。
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