囚われの保育士は過保護な早漏先輩を射止めて (Page 6)
「おっと、今日は火煙センセーも一緒なんですね…淫乱先生、約束の時間だろ。早く抜いてくれよ――こちとらアンタのためにワザと1ヶ月分ストレスを溜め込んでんだよ。発散させねぇと、暴発しちまう」
口元をだらしなく緩めて部屋へ入ってきたのは、佐野さんだった。人の目もあるのに、入口で下着姿になった彼は、下半身を撫でながらこちらへ近寄ってくる。
「淫乱先生、待ち焦がれてただろ?俺が教えたアナルの気持ちよさ、もう一度味合わせてやるからよぉ…」
怖い。火煙先生には強がりを言ったけど、あの男の手でもう一度鋭い痛みを味わうなんて…僕には耐えられない。
「唯!」
恐怖のあまりに足がすくみ、動かなくなった身体が突然後方へと引かれた。
相手は彼――火煙先生だった。バランスを崩した僕の手に自分の指を絡めるなり、うやうやしく、甲にキスを落したのだ。
「悪いけど、俺は宮園先生を愛してる。アンタには…いや、誰にも渡さない」
まるで保護者にケンカを売るような発言に、僕の方がたじろいでしまう。それってつまり…どういう意味なんだろう。火煙先生は僕のボディガードだよね?だとしたら、今の言葉は演技ってこと…?
『勝手にしろよっ!!』と走り去る佐野さんを見て、僕はボンヤリとそう考えていた。
「何で手の甲にキスだなんて変なコトしたんですか?そもそも先生は僕の面倒を見すぎです。そんなにされたら…意識しちゃいますよ」
先程の出来事が夢なのか現実なのか判断できず、照れ隠しで先生には背を向けたまま僕は言った。
だって有り得る?僕みたいな汚れた人間を“愛してる”だなんて。
「意識しろよ、唯。俺の知ってる知識、全部唯に教えるから…唯も気持ちいいトコ俺に教えて?」
僕の考えは的外れのようだった。気づけば彼に背後からすっぽりと包まれていて、頭上でくすぐったいくらい甘い声がする。火煙先生らしくなく、指先が震えているのを感じて、僕は彼を安心させるように『はい』と告げたのだった。
それにしても火煙先生ってば案外ウブだったみたいで、僕の返事を聞いたあと、しばらくは“ウソだ!ウソだ!”なんて自分の頬をつねったり、叩いたり。かと思えば、唐突に立ち上がって、『すぐに戻るから、ちょっと待っててな!用務員のおっちゃんに不審者が入らないよう見張ってもらうから、ここを動くんじゃねぇぞ!』なんて言い残して、猛ダッシュでどこかへ消えてしまった。
10分後、ホクホク顔で戻ってきた先生の手にはドラッグストアの袋。中身はストロベリーの香りつきローションとゴムで、切り替えの早さに驚いてしまう。そのまま『ムードがなくて悪いけど…』と申し訳なさそうに、人気(ひとけ)のない物品庫へと誘われ…僕は初めて愛しい人と繋がる喜びを知った。
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