フラれて掘られて
交際3年目で浮気を突きつけられた信也(しんや)は馴染みのバーでやけ酒を煽っていた。可愛くて大好きだった元恋人に追い出され、声をかけてきたつばさに持ち帰られる。信也に一目惚れしているというつばさは、なぜ2人が別れたのか察しているようで……?
付き合って3年にもなるとときめきが不足するだとか、マンネリ化してセックスレスになるだとか、そういう話を聞いたことはある。
ほんの数日前までの俺たちは、愛情が深まることはあっても、薄れるなんてないよねと笑いあっていた。
「ごめん。好きな人がいるんだ、別れて」
「……は?え、ちょっと待てよ」
「正直お前とのエッチはつまんないし飽きてたし、いい歳して愛だ恋だってキラキラしてんのキモいと思ってたんだ」
仕事帰りに立ち寄ったバーで知り合って3年、記念日やイベントも欠かさずにやって、大事にしてきた。
愛してるっていうと笑いながら俺もって言ってくれる春人が好きだった。
キモいの言葉と共にぶちまけられた、2人の思い出の品。
春人に似合うと思って買った腕時計、おそろいの指輪、ネックレス、旅行先で買ったTシャツ、大事に取ってた初デートの時の映画の半券。
「契約者は俺だし、悪いけどすぐに出てってもらえる?今夜家に呼んでるんだよね」
「そんな無茶苦茶な…本気で言ってるのかよ」
「本気。まだ告白はしてないけど、体の相性もバッチリでさー。どうせOKもらえるだろうから信也は邪魔なんだよ」
「………マジ、か」
それっきり春人は俺に視線を向けることなく、部屋の片付けを始めた。
体の相性ってことは、俺と付き合ってる間にそいつとやってるわけで。俺だって、そんな春人とは今までみたいにやっていけない。
「とりあえず寝られるところ探してくる、最後にわがまま言わせてくれ。俺の荷物、まとめておいて」
声が震えて泣きそうになるのをグッと堪えて、俺は急いで不動産屋に駆け出した。
春人とは2年近く同棲してる。そろそろ更新だね、って話してたのだってつい先日のことだ。
本当に数日前までは何も変わらなかった。生活費は折半、家事も当番制、休日はデートをして、たまに旅行に行って。
毎日が幸せで、浮気されてるなんて考えたこともなかった。
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