五感すべてで君を感じたい (Page 2)
「お疲れー」
「二日酔い気をつけろよー」
先輩たちから肩を叩かれてふらつく俺を、同僚の男が支えてくれた。
酒があまり強くない俺は、先輩たちにのせられて、いつもより飲んでしまった。時間はいつの間にか日付を跨いでいる。
「おい、リュウ、大丈夫か?」
「あー、大丈夫」
「大丈夫って、ふらふらじゃん。しょうがねぇな、家まで送ってやる」
「…あー、悪いな」
このまま一人で帰るにも、足がふらふらで動かないので、大人しく同僚に甘えることにした。
タクシーに乗り込んで自宅の住所を告げる。数十分で自宅のあるマンションに到着した。親切なことに同僚もタクシーを一緒に降りて、部屋まで肩を支えてくれた。
鍵を開けて部屋に入る。部屋はしんと静まり返っている。
「ただいまー」
俺の声にすぐ電気が付いて、パタパタとケンゴが走ってきた。
「おかえりー、…ってだれ?」
ケンゴは俺の肩を支えてくれている同僚をジロッとにらんだ。
「俺の同僚だよ。飲みすぎだから家まで届けてくれた」
「ふぅん」
同僚は、ケンゴの態度に気を悪くしたのか「じゃあな」と言い残し、すぐに帰って行った。
少しいらいらした様子でケンゴが言う。
「リュウさ、なんで途中から携帯見なくなったの?」
「いやー、先輩と話してたから見れなかったんだよ」
「…ホントに?電源落としたりとかしてないよね…?」
「…んなことするわけないだろ?」
「ふぅん…」
まだ酔いの覚め切らない俺は、服だけ脱いでそのまま布団に転がった。そんな俺の上にケンゴが覆いかぶさってくる。
「…はぁ、ケンゴやめろって、俺疲れてんだよ」
「なんか最近冷たくない?」
「んなことないだろ」
ケンゴを無視して俺は目をつむった。すぐに眠気が襲ってきた。夢の住人になろうとしたその時、腕に衝撃が走った。
見てみると、ケンゴが俺が脱ぎ捨てたスーツのネクタイで俺の腕を縛り上げている。
「…は!?なにしんのお前」
「リュウが悪いんだよ。俺をこんな不安にさせて」
ケンゴは腕を縛られて自由がなくなった俺の着ているものをすべて剝ぎ取った。
そして、俺がいつも使っているアイマスクを俺に付けて言った。
「なにも見ないで。俺のことだけ考えてて」
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