陰間茶屋のお話 (Page 2)

「こい、十五夜」

男はぐいぐいと引っ張っていく。

「あ、あの、わっちはまだ、寝所のことは何も知りんせん…!」

「好都合だ!俺はウブな陰間を一人前に仕込んでやるのが趣味なんだ」

パァン!と音がするほど勢いよく、男が開け放ったのは、茶屋の中でも一番のお得意様しか使えない、広間の部屋だった。

「ぬ、主さま…、ここで…わっちを抱きんすか…?!」

「もちろんだ。俺に粗末な部屋を使えというのか?」

「めっそうもありんせん。でも、わっちには過ぎた部屋でありんす…」

「お前のための部屋じゃない。俺のための部屋だ。さあ、こちらへ来い。着物を脱がしてやろう」

あっという間に着物を脱がされたが、あばらがうっすらと浮くおれの身体を見た男は怪訝な顔をした。

「お前みたいなガリガリの身体は興ざめだ!飯を食え、肥させてやる」

男はそう言っておれのために飯を取って、食わせてくれたあと、おれの身体を撫で回し、舐め回して、自分は着物どころか息ひとつ乱さないまま、大枚をはたいて帰って行った。

男は藤代新右衛門といい、この町を拠点にした材木問屋の若旦那だという。

それがなんで、陰間茶屋なんかに…と思ったが、おれが詮索することではないので聞かずにいた。

 

翌日から、砂原屋の店主はじめ奉公人はおれがヘマをしないように厳しくしつつ、上客を離さないようにおだて始めた。

今まで十五夜を邪魔に思っていた仲間からは、鈍十のくせに上客を掴まえたと風当たりは強くなった。

「来たぞ、十五夜」

「おいでなんし…」

そんな短いやりとりを終えると、新右衛門様はおれを寝所へ連れ込む。

そうして、一方的に責められるばかりの夜が幾日か続いた。

「来たぞ、十五夜」

「新右衛門様、おいでなんし…!」

おれはすっかり、この人に覚え込まされた手管に、身も心も酔ってしまっていた。

「十五夜、いい子にしていたか」

「…もちろんっ、いい子にしんした…!お約束どおり、後ろも埋めておりんす」

昨晩、新右衛門様が来た時、おれに「明日の朝から、俺が来るまで尻へいれておけ」と、男性器を模した木型を渡されていた。

おれはそれを、今朝、腹を綺麗にしてから入れっぱなしにしてあった。

「言いつけを守って、偉いぞ十五夜。しかし、もう前が膨らんでいるな。期待しているのか」

「新右衛門様のお手が待ち遠しくて仕方がありんせん…、意地悪をしないでくんなまし…」

「ああ、もう欲しくてたまらん顔だな」

吉原の花魁はこんな風に、客に媚びたりしないという。

でもおれは、この人を好いてしまったのだから、仕方がない。

「そこへ横になれ。張り型を押し込めた穴を見せてみろ」

言われるまま、着物のすそをさばいて脚を開き、浅ましく新右衛門様を求める尻を露わにした。

「俺のよりは小さいが、それなりの大きさのものを、よくもこんなに咥え込んだものだな…」

本来すぼまっているはずのところを広げられて、その縁を新右衛門様の指が撫でる。

「アッ、あぁっ…」

それだけで絶頂してしまいそうな快楽が襲ってくる。

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