スイーツみたいに甘い彼 (Page 3)
「…僕が環さんに初めて声をかけた時のこと、覚えてますか?」
「忘れられない」
「『ああ、きっとこの人、とってもケーキが好きなんだな』って…。『だったら、もしかしたら僕のことに興味を持ってくれるかもしれないな』って…。そういう計算が働いたんですよ。僕はそういう人間なんです」
笑顔で有起哉は言った。
「よろしくお願いします」
「こ、こちらこそ!!」
こうして環と有起哉は正式にカップルになり──その後──。
「あのう…違和感を感じませんか、有起哉くん」
「何がです?」
「俺が受けなの? なんで?」
「何でも何も、僕タチ専なんですよ」
自ら整えたベッドに、自らが押し倒されているという環の困惑。それを楽しむかのように、有起哉は意地悪く口付けた。
呼吸もできないほどに深く口付けたかと思うと、歯列をなぞるように舌先を動かしたり、舌の裏の敏感な部分をこねまわす。有起哉のキスは、思考を留めるに十分な技巧を持ち合わせていた。
「それとも、もう別れますか? 性的指向が合わないとやっぱり難しいし…」
「30分で別れたとなると不名誉すぎる! …ちょっとびっくりしただけなんだ」
「よかった」
有起哉は環の服を剥ぎ取っていく。帰宅してすぐにシャワーは浴びたものの、汗臭くなっていないだろうか。というか、まさか自分が受けだとは思わなかったから、アナルの準備をきちんとしていない。
「ちゃんと洗ったなら十分ですよ。ほぐすのは僕がやりますから」
「いや、でも、その…」
そうだ。大事なことを忘れていた。
「ローションが…多分残り少ない」
まさかこんな急展開になるとは思わず、今日中にベッドまでは至らないだろうと買い足しておかなかった。手抜かりといえば手抜かりなのだが、これでもしかしたら有起哉が思いとどまってくれるかもしれない。さすがに心の準備期間が欲しい。
「ああ。じゃあ、これ使いましょう」
有起哉は「なんだそんなことか」とでも言いたげに、ひょいっと生クリームのボウルを手に取り、環の体に塗りつけていく。
「案外滑りがよくなるんですよ」
アナルにもたっぷりと塗りつけ、有起哉は環の体をついばみ始めた。
初めは唇から。優しい甘さが有起哉の唾液と絡まって、環はとろけてしまいそうな心地よさを味わう。
首筋をぺろりと舐めあげ、有起哉の舌は胸元へと向かう。たっぷりと塗られたクリームを吸うように、有起哉は環の乳首を愛撫した。
「んっ…はっ…」
「気持ちいいですか? とっても美味しいですよ」
環の感じる部分に塗り足し、またそれを舐め、また塗り足し…いつの間にか、部屋の中はクリームの甘い香りで満たされてしまった。
「こっちもほぐしますね」
「んっ…!」
ぬるりと入り込んできた指に、ビクビクと体が震える。有起哉はゆっくりと指を増やしながらほぐし、環に何度も口付けをした。
環の中で、あの繊細なケーキを生み出す指がうごめいている。タチ専というだけあって、的確にこちらの快感のツボをつくかのような動きに、環は声を我慢することができない。
「環さん…とっても可愛いです」
「こん…な…奴にっ…可愛いとかっ…」
「可愛いものは可愛いんです」
本当に愛おしそうに有起哉は環を見つめた。視線に目がくらんでしまいそうになる。
「恥ずかしい…」
「恥ずかしいことなんてないですよ。全部、みせてください」
すっかり緩んだアナルから指を引き抜くと、有起哉は素早くコンドームを装着した。
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