守るのはあなたの手だけではなく。 (Page 2)
「ごめんなさい…」
「いえ…、構いませんよ」
今度は少し遠くで、ごろごろごろ…と雷鳴が聞こえる。
まるで稲光に照らされたような薄い色の瞳が、不安をいっぱいにたたえてダニーを見上げている。
「お願い…帰らないで…、ここにいてください…」
ダニーの背中にしがみつくように腕を回しながら、か細い声でルイはそう懇願した。
ダニーはその様子がかわいそうで、せめて雷が少し落ち着くまでここに居ようと考えた。
「承知いたしました。それでは…、こちらへ」
ダニーはそっと、ルイをベッドの方へ誘導した。
座らせて、隣へ腰掛ける。
無線を確認すると、雷が落ちた影響からか繋がらなくなっていた。
雷鳴がとどろくたび、ルイはビクッと身を縮めている。
「私も子供の頃、雷が怖くて仕方ありませんでしたから、よくわかります」
「ラファエロさんもですか…?」
ルイは、不安と恐怖を帯びた表情でダニーを見上げた。
「ええ。子供の頃は、大きな音が苦手でした」
「私はもう、いい大人なのに…」
まるで水面に緑色の宝石を落とした様な、潤んだルイの瞳にダニーはドキリとする。
「…雷の日は怖くて一人で居られないんです」
窓ガラスを叩く雨音はどんどん強まっていく。
それに比例するように、ルイの不安そうな表情は深まっていった。
「…ラファエロさん…」
ダニーのうなじに、ルイの細い腕が回る。
瞼が閉じ、潤んだ瞳が閉ざされた。
薄い唇がためらいがちに開いて、
「抱いて、ください」
雨音にかき消されそうなほど、小さく呟いた。
「え…っ」
ダニーは、そのルイの様子が、恐ろしいほどに美しく見えて息を飲む。
硬直したように動かないダニーに、ルイはさらに抱きつくようにして近づく。
「…お願いです。どんな風にしてもいいから…」
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