サンカヨウ~男娼ノ愛~ (Page 3)
「日織、日織ぃ…」
ぐちぐちと音を立て蕾を開かせんと香油を使い指で押し広げられ、圧迫感と物足りなさでゆらゆらと腰が動き名を呼んだ。
「日織のが、欲しい…」
「仕方ない子だ」
指を一気に抜かれ、「ひあっ!」と情けない声を上げたものの、物足りなさにいっそう尻を高く上げた。
昂った日織の男根があてがわれ、期待に震える。
「っあ、あああ!!」
中が満たされ、苦しさや満足感、快楽と切なさで様々な感情が渦巻く。
一つになれるほど近い。
近いのに、一緒になれない程、遠い。
何故ならこの身は男娼であり、売り物だから。
「はぁ、あっ、んあっ、ひお、りっ…」
「雪之丞、可愛い…もっと、呼んでくれ」
快楽で全てが潰されていく。
足掻いても一緒になれない悲しさも。
日織が来ない時に他の人に抱かれた感触も。
此処で一生を終える虚しさも。
「ひおり、ひお、り、すき、すきぃ…」
「雪之丞、俺もだ、愛してる、雪之丞」
行灯が照らしだし揺れる影。
淫靡で、情緒的で──、それは水墨画の様で。
荒い吐息と水音に混ざり、いつしか外からもしとしとと雨音が響いていた。
「ひおり、もう、ほしい、なかにぃ…!」
「ああ、雪之丞、俺ももう…」
どくん、と一際大きく波打ち、熱が溶けゆく。
──此の儘(このまま)共に溶け逝けば良いのに。
荒く息をつき、日織の腕の中で身動ぐと愛おしそうに唇を落とした。
「雪之丞、俺にはお前だけでさァ」
「はは、俺もだよ」
ツキン、と棘が胸を刺した。
雨が、胸の中の花の色を失くす。まるで、サンカヨウの様に。
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