濡れ鴉と白い羽~媚薬漬で閉じ込めて~

・作

ラーベン(鴉)領を収めるシュヴァルツ(黒)家のクリストフは良き領主として在りそれを支えるエトヴィン・ケステンも良き執事であった。領主の呪いに苦しみもがく主を支えるが壊れ行く彼は媚薬を飲ませ牢に放り込み———。

 ことり、と小瓶が転がった。
その胸を押さえ、熱い吐息を押さえるかの如く瞳をきつく閉じ小さく「ふ、」と息を漏らす。

「エトヴィン」
「っ、はい…主様」
「まだ、残っているだろう?」

 目の前に座する濡れ鴉(からす)のような美しい髪を結い上げ同じ色の瞳が私を射抜く。そのしなやかな指先が差す先には小瓶がまだずらりと並んでいる。

「わかって、おります」

そうして、また一つ凝った装飾が施された小瓶を手に取り、蓋を開けると口に流し込んだ。

*****

 ラーベン領では長く不作が続き民は苦しみ喘いでいた。鬱蒼(うっそう)とした雰囲気の中、森をかき分け進みゆくと寝起きざまの様に突如現れる館がある。ラーベン領を収めるシュヴァルツ家の館である。
 
 黒き鴉の領として畏怖されることが多かったが、その実領主は他の領主と比べ税は安く領民の声も聞き入れてくれる良き領主であった。

 館の中は暗く、燭台を手に酷くゆっくりとした足取りでしか進むことが出来ない。だがそれはある種仕える者としては有難いというものだった。常に丁寧な所作を心掛けねばならないのだから。

「失礼いたします。クリストフ・フォン・シュヴァルツ様、ラーベン領の長を連れてまいりました」
「入室を許可する。エトヴィン、後ろに控えよ」

 甘く低い声が響き、私は主の後ろへ控える。濡れ鴉のような美しい髪が燭台の灯火をゆらゆらと受け光る。

「して、何用か」
「お目通り有難く存じます、クリストフ・フォン・シュヴァルツ様。他領よりもずっと良い環境に置かせて頂いて領民一同とても助かっております。ですが、この不作続きでもう限界が来ております…」

*****

公開日:

感想・レビュー

レビューはまだありません。最初のレビューを書いてみませんか?

レビューを書く

人気のタグ

ハッピーエンド 甘々 エロい 無理矢理 エロエロ ゲイ 胸キュン ノンケ ほのぼの 年の差 切ない ちょいエロ 同級生 年下攻め リーマン 誘い受け 職業もの シリアス 健気受け ドS スーツ 調教 社会人 鬼畜 幼馴染み エロすぎ注意 ツンデレ ファンタジー ダーク ヤンデレ

すべてのタグを見る

月間ランキング

  1. おにいちゃんの射精管理

    アンノアンズ4600Views

  2. 傲慢調教師~逆調教メス堕チ~

    雷音4227Views

  3. コインランドリーの罠にご注意!

    タノタ3872Views

  4. 最強バイブレーション

    タノタ2958Views

  5. 偏愛監禁~部下に辱められた上司~

    くま野2440Views

  6. 竜宮北別館は男の花園!?~世話焼き乙彦の家臣仲人計画~

    雷音2011Views

  7. 24時間入れっぱなしチャレンジ

    くま野1811Views

  8. 僕はご主人様のえっちなペット

    くま野1634Views

  9. 甘くとろけて生クリームプレイ

    くま野1620Views

  10. 年の差なんてバイバイ

    タノタ1384Views

最近のコメント

  • セキ on 抵抗してみて?尊い
  • ヨシキ on 泡まみれ~新人ソープくんは優男ボーイに絆されて~素敵です!! 最初澪くんの切実さとコンプレックスが可愛いな…と思って拝見していたのですが玲さんの優しいこと…!🙏✨ 玲さんも澪くんにソープ嬢をさせること自体嫌だけど、せめて本番だけでも守るため…という気持ちからの研修なんですよね😂 一目惚れからそこまで守りきろうとする玲さんにときめきです…!❤️‍🔥 特に好きだったのが澪くんが必死のアピールをするために玲さんのお顔にその巨乳を押し付けたところです…!! 可愛すぎませんか…!!❤️‍🔥❤️‍🔥 この2人には幸せになってほしいです✨
  • セキ on 通い猫に恋をしたこのまま結婚すらゃあいいのに そしてあおいをハヤトサン幸せにして〜
  • セキ on 通い猫に恋をしたこのまま結婚すらゃあいいのに
  • まる on 雨に濡れる花何度も読み返したくなる 心情の描写もいいけど、もっといちゃついてるところを見てみたい! 大人の葛藤が心に刺さる