結婚前夜に犯した最初で最後の過ち (Page 2)
本来は無反応な部位を反応させたまま桜咲と店を後にし、手近なビジネスホテルに移動した。
「これを着けて、ベッドに横になってください」
セミダブルの部屋に入ると、黒く折り畳まれた布を手渡された。
「アイマスクです」
「どうして?」
「ノーマルの先輩が、僕と最後までセックスできるようにです」
「…」
その言葉に何も応えられないまま、アイマスクを着けてベッドに仰向けになった。
桜咲とセックスする自分を見て、萎えないかと問われれば、イエスとは応えられなかった。
「ここから声は出さないようにします」
ベッドがもう一人分の体重を受け取る、ギシッと鳴る音がする。
「先輩は挿れる側なので、」
ジジっとファスナーが下りる音が鳴り、下半身の窮屈さが幾分か和らいだ。
「お相手の女性か、好みの女性を想像しててください」
ジュッと吸い付く水音と同時に、熱く湿った何かに、中心部の肉塊が覆われる。
感触の根源が、今一緒にいる男の口内を満たす液体と粘膜だと解るのに、時間はかからなかった。
(どんな顔して、オレの性器を咥えてるんだろうか?)
そんな好奇心に駆られて、アイマスクを外したくなったが、行動は寸前で留まった。
(いざ、桜咲の顔を見て萎えたら…)
好奇心は不安に代わり、上げようとした腕をベッドへ戻した。
そんな葛藤を知るはずない桜咲は、オレに容赦なく官能を与えていく。
付け根から先端へ、舌先だろう物体がゆっくりと這い上がる。
薄い皮膚を撫でられる度、背中をゾクゾクした何かが走り、ピクピクと半身を振るわせた。
局部には溶けるような熱が一気に集約される。
「ッ、」
眉間や腹筋に力を入れ、中心から全身を巡る恍惚とした熱気を紛らそうとするが、桜咲がそれを許さなかった。
余所見するなと言わんばかりに、丸まった舌先で鈴口に触れる。
「っ、」
蕩けるような熱が、電流のようなビリっとした鋭く鮮明な熱に変わる。
桜咲が与える刺激の変化はそれだけじゃなかった。
亀頭部と陰茎の境目や周辺は濡れた口内に、残りの部分は少し乾燥した掌と指で覆われた。
ぬるっとした頬裏の粘膜とザラっとした舌。
少し乾燥した指や手の平に気紛れに刺さる短く硬い爪。
3つの異なる摩擦熱が絶妙に入り混じり、徐々にオレを快楽の海に追い詰めていく。
「…話し、かけてもいいのか?」
「もちろんです」
「オレの、ちゃんと勃ってるのか?」
「はい、勃ってますよ」
「そうか」
「射精まで待ち切れないのか、先走りまで垂らして」
「そこまで聞いてないし」
「ゴメンなさい。先輩の反応が、すごく嬉しくてつい」
嬉しそうな声でそう付け加えられると、上下の摩擦運動が再開される。
絶頂が待ち遠しいのか(いや、溜まってるわけじゃなく)。
オレ好みの諸々な律動を短時間で理解したのか。
「っ…はぁっ、」
再開後の刺激はより濃密で、扱かれる皮膚はそれらを敏感に感知した。
指先の末端や脳の血管に至るまで。
中心で収まり切らない体温が全身を巡り、オレの理性を完全に焼き切っていく。
「もうっ、」
吐精の意思を暗に滲ませ、呼吸を詰めた声で呟いた時だった。
律動がピタリと停止し、生殺し状態に陥った。
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