騎士陥落〜永遠の檻の中〜
祖国の騎士団長として戦う青年、ノア・フォン・フローレンス。参謀であるルイ・オリヴィエとは恋人同士でもあり、戦いの中で精神を消耗しながらも彼に支えられなんとか生き延びてきた。隣国との戦争がもうすぐ終わると信じていた2人は、「戦いが終わったら死ぬまで一緒にいよう」と誓いを立てるが…。
「…はっ」
夢を見た。
全方位から剣で身体を貫かれ、最後は深い谷底に突き落とされる夢。
「…ノア、大丈夫かい」
隣から、低く優しげな声が聞こえた。恋人のルイ・オリヴィエが心配してくれている。
壊れ物にでも触るかのように優しく背中を撫でる大きな手のひらに身を任せていると、弾んでいた心臓も自然と落ち着く。
「…大丈夫だ。すまない、心配ばかりかけて」
漆黒の髪と瞳を持つ俺とは対照的な、ブロンドの髪と澄んだブルーの瞳を持つ彼。
自分に無い美しさを持つ憧れの人だった。幼い頃から一緒にいるが、その感情は揺らぐことはない。
こうして、晴れて恋人同士の関係を結んだ今でさえも。
「またうなされていたよ。いつもの夢?」
「ああ…」
「そうか…最近は目まぐるしい忙しさだったからね。仕方ないさ」
つい先日、俺が率いる騎士団は、隣国への奇襲作戦を成功させて自国に凱旋したばかりだった。
「国中の人々から讃えられる君は僕にとって誇らしかったよ。もっと自信を持てばいい」
「…でも俺は結局のところ、何百人も虐殺した…ただの殺人鬼だ」
「…」
「だいたい、俺が騎士団長っていうのもおかしな話なんだ。ただ人より剣術が優れているっていうだけで、ほとんど運でのし上がったようなもので…」
「やめてくれ」
ルイが、珍しく大声をあげた。
俺が驚いて思わず肩を揺らすと、彼は辛そうな表情で俺の身体を強く抱き締めた。
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