騎士陥落〜永遠の檻の中〜 (Page 2)
「ノア。それ以上、自分を卑下しないで」
ルイが俺を抱き締める腕に力がこもる。
「でも…そう思える君は、やっぱりトップにふさわしいとも僕は思うんだ」
「ふさわしくなんかない。むしろルイ、お前の方が頭も切れるし機転が利く。参謀の立場に落ち着いていい存在じゃないだろ」
「ノア、そんなこと言わないでくれ。僕は君のように強くない」
俺の肩口に顔を埋め、ルイは噛み締めるように呟いた。
「もう少しの辛抱なんだよ。戦争は、僕たち優勢のまま…もうすぐ終わる」
「ルイ…」
「戦争が終わったら、二人で人里離れた場所にでも移り住もう。暗い過去の何もかもを忘れてさ」
「…そしたら、死ぬまで一緒に暮らすっていうのか?」
「ああ。そういうの、だめかな?」
ルイの広い背中に手を回し、俺も彼を抱き締め返した。
「…良いに決まってるだろ」
俺が噛み締めるように言うと、ルイは穏やかに笑った。
*****
「…くっ」
粗末な布一枚で覆われた身体に襲った刺激により、俺は目を醒ます。
傷だらけの自分の身体を見てから現状を思い出した。数万の兵による隣国の奇襲により、我が国の騎士団は捕らえられたのだと。
「目ェ覚めたか?一丁前に気絶してんじゃねぇよ」
頭上から、荒々しい口調の男の怒りに満ちた声が降ってきた。敵軍の長官である。長身かつ屈強な身体つきで、この状況だと余計威圧感が強く感じられる。
「貴様…アダム・コーエン大尉か…」
彼の顔は知っていた。
以前、こちら側からの奇襲の際に前線で戦っていた軍の大尉だったからだ。しかし、戦乱の中で我が騎士団が討ちとったと、以前ルイから報告があったはず。
「まさか、生きていたとはな…」
「地獄の底から這い上がってきたのさ」
薄暗かったが、そんな中でもコーエンの意地悪い笑みはすぐ分かり、背筋に寒気が走った。
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