今度までには。〜気ままな恋人〜
人気急上昇中の若手俳優、七瀬晴人と深山優雨。実は恋人同士である2人だが、もともとノンケで浮気癖のある晴人に優雨は頭を悩ませていた。そんなある日、若手女優と晴人の熱愛報道が週刊誌に載り、とうとう2人に別れの危機が…!?
俺、絶賛売り出し中の若手俳優・深山優雨は、同じ事務所の七瀬晴人と付き合っている。
ちなみに晴人はもともとノンケ。しかも、女遊びが激しいタイプだった。
そんな彼と奇跡的に恋人同士になれた俺だけど、人肌恋しがる性質の晴人と付き合うのは一筋縄ではいかなくて、俺は日々悩んでいる。
*****
何度目か分からない晴人の異変を感じたのは、おとといの夜に電話した時だった。
もう切ろうかとした時、ちょうど慌てたように電話に出た晴人の声はどこか上擦っていて、それが情事中の声色を感じさせたから。
こういう時の嫌な予感は、大抵は当たってしまうのが悲しい。
そして今日、仕事の後に晴人の家に寄ったら案の定だった。
家には彼しかいなかったけど、明らかに俺と晴人以外のものである長い髪が1本床に落ちているのを見つけてしまい、それを問いただしたところ彼は潔く頭を下げてきた。
「優雨、ほんっとうにごめん!!」
リビングのど真ん中で、仁王立ちする俺の前に土下座で謝る晴人。こんな漫画のようなシチュエーションもなかなか無い。でも、こんなことは彼と付き合い始めてしょっちゅう起きていた。
「あのさぁ…お前、とりあえず謝っておけばいいって思ってるだろ。何回浮気したら気が済むんだよ」
「だって…優雨、ドラマ始まってから忙しくて寂しかったから…」
確かに、1ヶ月前からドラマ撮影で忙しい日々を送っていたのは事実だった。
だからって浮気に走っていいということではないけれど、うるうるした瞳に上目遣いで見つめられると、なんだかこっちの方が悪いような錯覚に陥ってしまう。
さすが、子犬系で売り出している彼らしい。
「しかも…あのドラマ、わりと濃いめのキスシーンあるじゃん…普通に妬いた…」
「はぁ!?仕事だから仕方ないだろ。しかもお前、23にもなって子供みたいなこと言うなよ!」
「だって辛いものは辛いし…」
晴人の弱っている姿は、同い年とは思えないほど庇護欲をそそる。
辛いのは俺の方だと言ってやりたかったけど、なぜか半泣きになっている晴人の姿に耐えられなくて、思わずしゃがんでその背中を撫でた。
俺はどこまでも都合の良い男だ、と思わず心の中で自嘲した。
「…もう、分かった。分かったから。俺も…その、寂しい思いさせて悪かったよ」
「うぅ…っ、優雨…」
「いて…っ、おい…晴人…ん、ふぅ…ん、ん…ぁ、んっ!」
意外に大きな掌で顔を固定され、唇を唇で塞がれた。
久しぶりの彼の感触に身体を震わせると、間髪いれずにシャツの上から胸の突起を弄られる。
爪を軽く立てられしつこく捏ねられると力が一気に抜ける。そのまま床に崩れそうになったところで、晴人に抱き留められた。
「優雨、大好きだよ」
「お前…っ、ずるい…今度は許さないから…っ」
「うん。なんとか頑張ります」
「頑張りますじゃなくて、しないって言えよ!」
「ふふ、そうだね。しないしない」
真剣に俺の言葉を受け止めているとは思えない晴人。やはり、不安が拭えない。
それでも俺は、彼のそばから離れられないのだ。自分にとっても悪いことだと理解しているのに。
今夜も俺は、晴人に大人しく寝室に連れていかれ、喜んで身体を差し出す。
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