僕は人魚姫にはなれない (Page 4)

切ない、けれどもう少しこのままで…。

そんなふうに思う日々を繰り返していたある日、前川は僕をまたあの喫茶店へ呼び出した。

「実は…笠井と付き合うことになった」

頭を後ろから思いっきり大きな塊に殴られたような、そんな衝撃。

驚きとか、悲しみとか、いろんな感情がぐちゃぐちゃになって何も言えないでいる僕に、前川は照れたように話を続けた。

要約すると、笠井も同性愛者で、ずっと前川のことを好きだったそう。

そんな少女漫画、僕の耳には右から左。

信じられないし、信じたくなかった。

「西野のおかげだ!本当にありがとう!」

あのとき一目惚れしたキラキラの笑顔が、今はとにかく腹立たしくて仕方がない。

「…ねえ、前川」

黒いものが僕の中で広がっていく。

「最後にもう1回だけ僕のこと抱いてよ」

「えっ、でも俺…」

「笠井がいるから…って言いたいの?…、でもさ、そんな笠井と付き合えたの僕のおかげなんだよね?…だったら最後に恩返ししてもバチ当たらないと思うよ?」

*****

「西野…ホントにするの?」

初めて前川と来たホテル。

ここまで来ておいて未だにうだうだしている前川。

「なに…散々今まで僕のこと抱いてきたくせに」

「そうだけど…でも…」

「いつも通りでいいから…早く」

いつも通り、僕は顔を見せないようにベッドの上でうつ伏せになる。

すでに着衣はすべて脱いだ状態で。

ムードもなにもない。

これが僕と前川のセックスだ。

ツプリと前川の指が僕の後孔に挿れられる。

そして何度も出たり入ったりを繰り返しながら、少しずつ奥へ奥へと進んでくる。

ローションでぐちゃぐちゃに濡らしたそこは、いつも通り簡単に前川の指を飲み込んだ。

「っふ…」

ぐっぐっと押し込まれ、中が擦れてキュンキュンする。

つい漏れてしまう吐息。

慌てて手で口を覆った。

どうやら気付かれていないようで、前川は指をクパクパ広げ、僕の中を慣らしていった。

「笠井…こんないやらしくぐちゃぐちゃになってる…ねえ、俺のもう挿れていい?」

余裕のない前川の声が背中越しで聞こえる。

僕は声を出さずに首を縦に振った。

その瞬間、いつのまにか勃ちあがっていたペニスが後孔の入口をぐりぐりと刺激した。

そして、クプリと中に差し込まれる。

「ッぁ」

ズンズンと中に侵入して、何度も前川を受け入れてきたそこは、容易に根元まで咥え込んだ。

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