隠れビッチを落としたい (Page 2)
それを知ったら、普通幻滅したりするのかもしれない。
でも、俺はしなかった。
いや、たしかにショックを受けたのはそうなんだけど…。
それより、もしかしたら先輩と近付けるチャンスかもと、逆にポジティブに思えた。
そんなとき、先輩から久々にご飯に誘われた。
絶好の機会だと思い、俺は二つ返事で先輩について行った。
*****
「なんか藤堂とご飯久々だね」
ふにゃりといつもの笑みで俺を見る。
「最近全然誘ってくれないから」
「先輩からご飯そんな頻繁に誘えないよ、パワハラだぁとか思われたら困るしね」
「俺はそんなの思わないし、湊先輩とご飯嬉しいです」
「藤堂はいい子だねぇ」
思えば、何度もこうして軽いジャブを打ってきたけど、いつものらりくらりと躱されていた。
以前までは、鈍感でノンケだから気付かないんだと思っていたけど、数多の男と遊んでいることを知った今、もしかしたら、俺の気持ちをわかったうえでわざと躱しているのかも、と思った。
少し試してみようか…。
「いい子とかじゃなくて、湊先輩と一緒にいられるのが嬉しいんです」
「そっか、そんなに俺のこと慕ってくれてたんだね」
じっと見つめてみるけど、先輩はゆったりと笑みを浮かべて、ドリンクメニューへと視線を落とした。
やっぱり、この人はわかっている。
湊先輩は、本当はめちゃくちゃ周りのことに敏感で計算高い人だった。
それを上手く隠して、いつもの先輩を演じている。
でも、わざわざそれを演じて、俺の言葉を躱しているということは、今の関係を壊さないでおきましょうと遠回しに言われているのかもしれない。
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