幸も不幸も君の手で (Page 2)
数秒の沈黙の後、イケメンがゴソゴソとポケットを探り出した。何をしているのかといぶかしんでいたら、彼は手の平にキラキラ光る何かを乗せて見せてきた。
「じゃあこれ!これでおにーさんが削ってみてよ」
“これ”と彼が見せてきたものは、普段でもよく目にする1枚の5円玉だった。ただ、今まで見た5円玉よりも随分とキレイな黄金色をしていて、角度が変わるたびにキラッキラッとまぶしいぐらいに光り輝いていた。
「えっと…これ、は?」
僕が聞けば、イケメンは白い歯を見せて得意げに笑った。
「これ、今日お釣りでもらったんだよね。今年の5円玉」
見れば、なるほどたしかに、その5円玉は今年に製造されたものだった。
「俺、けっこうこういうこと多くて、運もいい方だから。この5円玉で削ってみたら、当たるかも」
その言葉を信じたわけではないけれど、少なくとも僕よりはラッキーの多い人生を歩んできたのだろうと思われるイケメンに、あやかりたいとは思ったかもしれない。
「…じゃぁ、お借りします」
イケメンに手渡された金ピカの5円玉で、恐る恐る、スクラッチカードを削った。
*****
「それじゃ、かんぱーい!」
イケメンがそう言って、生ビールのジョッキをカチンと僕のチューハイの入ったグラスにぶつけてくるので、軽くそのグラスを抑えてペコリと頭を下げた。グイグイと気持ちのいい飲みっぷりでジョッキを半分ぐらいまであけると、イケメンはチラッと僕を見てくる。
「ってか、本当にいーの?おにーさんのおごりで」
まだホワホワと湯気のたっている焼き鳥に噛み付きながら、僕は頷いた。
「元々使う予定のお金だったので。それに、貴方の5円玉でご利益があったと思うから…」
イケメンが渡してくれた五円玉で削ったスクラッチ。結果を言えば、当たった。高額ではないけど、3万円。つまり、買ったぶんがまるまる返ってきたわけで。
初めての経験と、手元に戻ってきた3万円を前に、僕は思わずイケメンを食事に誘っていた。
「使う予定って?」
不思議そうに聞いてくるイケメンに、少しためらいながらも僕は、本当の使い道を話すことにした。
最近のコメント