幸も不幸も君の手で (Page 7)
「仕方ないな。1回イカせてあげるね」
アタルくんはそう言うと、ローションで濡れた僕の自身を握ってグチグチと扱きだした。そうしておきながら、もう片方の手で後孔を弄ってくるから、頭の中がグズグズになっていく。
「あっあっああっイクっイッちゃうっ――!」
ドクっと全身の血流が上がって、下半身よりも下になっている頭の方へ流れていく。バチバチっと脳内がはじけて、視界がファッとくらんだ。直後、胸に、首に、顎に、ビービー弾みたいに飛沫が飛んできた。
「ぁ…は…」
白んだ視界がじんわりとクリアになってくると、自分が吐き出した欲が身体に飛んでいるのがわかった。なんて情けない姿だと思う反面、とんでもなく気持ちよかったことを教えるみたいに全身が震えている。
「ハハ、めっちゃイイ顔」
そう言って笑うアタルくんに、すべて任せたいと思ってしまうぐらい、僕の身体は溶かされていた。
片足だけを肩からおろして、アタルくんは、ギンギンに勃ったモノを僕のお尻にあてがってきた。
「ぅ…」
「怖い?」
そう聞いてきたアタルくんは、少し前までの意地悪な顔が嘘みたいに、優しいイケメン面で僕に向かって片手を伸ばしてきた。誘われるままに僕も片手を伸ばして、アタルくんの手に自分の手を重ねる。ギュッと指を絡めて強く握られた…と同時に、グリリッとアタルくんにナカを貫かれた。
「ああっイッ…」
こじ開けられた痛みに、思わずアタルくんの手を強く握り返していた。
どれぐらい経ったのだろう。時間にしたらほんの僅か数秒なのかもしれない。アタルくんは僕の最奥に挿入ったまま、ピタリと動きを止めていた。
「あ…の…?」
動かないのだろうかと単純に沸いた疑問を口に出そうとしたら、アタルくんは肩にひっかけたままの僕の片足にチュッとキスをした。
「ん。待ってね。今、コウタくんのナカに俺の形覚えさせてるから」
「えっ!」
思わずドキンッと心臓が跳ねた。そんな、いやらしくときめく表現を、今まで耳にしたことがあっただろうか。アタルくんの恋人でもないのに、恋をしたわけでもないのに、そもそも僕は男なのに、多分今、この瞬間僕は、乙女みたいにときめいている。
「動くよ」
僕のトキメキはそのままにして、アタルくんはもう1度僕の足に口づけを落としてから、腰をうごかしてきた。
「あっああっんっぁ」
ズン、ズン、とピストンを繰り返されるたびに、チュプチュプといやらしい音が弾ける。痛いなんて思ったのは最初だけで、アタルくんのモノが壁をこすって奥にあたるその動作のすべてが快感になって、とんでもなくキモチいい。ゾワゾワとたかぶる身体は、快感の頂点へと僕をつれていこうとしていた。
「あっひゃっ…なんっで、触ってない、のに…っ」
すぐに勃ちあがっていた僕の自身は、触れられもせずに先端からドクッドクッと白濁を吐き出していた。ドロドロと身体につたって流れていくそれは、まさに僕の欲そのもので、恥ずかしいはずなのに、この時間が終わってほしくないと、確かにそう思っていた。
広いバスルームで、たっぷりと浴槽に張られた湯の中、アタルくんは浴槽に背中を預けて僕はアタルくんに後ろから抱きかかえられている。
あの後、まともに足腰が立たなかった僕をアタルくんはお姫様抱っこでバスルームまで運んでくれて、精液とローションと汗でベチャベチャになっていた身体をキレイに洗い流してくれた。
「コウタくん、怒ってる?」
「…怒れないよ。僕何回もイッちゃったし…」
「ふふっ、やっぱちょろいわ。コウタくん」
言って、アタルくんは僕の身体をギュゥッと抱きしめてきた。
バスルームを後にして、全身の気だるさを感じながらヨタヨタと着替えていたら、「おっ」とアタルくんの声が部屋に響いた。彼の方を見やればその手には僕のスマホがあって、そして電子的な白い光りを放っていた。
「えっ!?僕のスマホっ…」
中途半端にシャツを着たまま慌ててアタルくんの方に駆け寄ると、得意げな顔で電源の入ったスマホを見せてきた。
「ほら。俺、何かツイてるんだよ」
「すごい。何度電源ボタン押しても入らなかったのに」
ありがとう、と頭を下げて、スマホを受け取ろうと手を差し出せば、ヒョイと頭上にそれは掲げられた。
「え…?」
「返してあげるからさ。コウタくん。連絡先教えて?」
不運なのか幸運なのか。僕はきっとこの先、彼を好きになってしまうと、そんな予感がした。
Fin.
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