エネマグラなんか知らない俺と
不幸な人生に終止符を打つべく、大滝進は履歴書を送りまくった。やっと運が巡ってきた!と期待に胸を弾ませるが、出勤初日に痴漢にあう不運っぷり。しかも相手は勤め先の社長様で…?!逃げるに逃げられない関係で身体の相性が試される!
ブランド物でもない、吊るしで売られている安いスーツ。
安いといってもシャツにネクタイに革靴にと揃えれば数万は余裕でするし、長年フリーター生活を送っていた俺にとっては大金だ。
高校を卒業してすぐ、憧れていた先輩が始めたラーメン屋の手伝いにいったはいいがほんの数年で潰れた。
その後も就職が決まったと思えば入社直前に事故に遭って駄目になったり、バイト初日に母親がぶっ倒れて結局駄目になったり。
日払いでなんとかしのいで、やっと就職にこぎつけた。何があっても今度こそ真っ当に働くんだ。
どうせどうにもならない人生だと、無謀にもそこそこ知名度の高い会社に履歴書を送りまくった。
箸にも棒にも掛からなかったのは当然だから気にしないが、その中で一社だけ返事をくれた。
学歴不問、未経験優遇の求人は偽りなく、あれよあれとと面接に持ち込み就職が決まった。
今日は俺の人生の再スタートだっていうのに、さっきから俺の尻に何かが当たっている。
久々の満員電車だし多少は覚悟していたが、これはラッシュのどうこうっていうより…
(間違いなく痴漢だ。っつっても成人した男が被害に遭うもんか?)
薄いスーツの上から下着をなぞる指が何度も俺の尻を撫でていく。
尻と太腿を往復した指が少しずつ前にずれてくる、股間に触ったら手を掴んで駅員に突き出してやろう。
でも、そんなことをしたら会社に遅れるのは間違いない。
「…!…ん、…」
今後、どんなに逆立ちしても絶対に入れないような会社だ。始まる前に終わりたくない。
電車が揺れた拍子に恐らく痴漢と思われる手が俺の身体を抱き締めてきた。
太腿から滑った手ががっちりと俺の股間を掴んでいるが、状況が状況だったから声をあげられなかった。
片手は胸に、もう片方は股間に。何度か見たAVみたいな状況に思わず苦笑いが浮かぶ。
俺が逃げないのをいいことに掌で股間を押さえながら、指先で脚の付け根や睾丸を撫で回す。
野郎に触られたって別になんてことはない、このままやり過ごしてやろうと決めた瞬間薄いシャツ越しに乳首を引っ掻かれる。
「ん、っ…ふ…」
(やばい、なんでこんな…声が出そうになるなんて俺も変態じゃねえか)
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