キス魔の弟が俺と彼を出逢わせた

・作

残業を終えたミツキはいつも通りに公園を横断して自宅に向かった。だけどいつもと違ったのは、同性のカップルがキスをしていたこと。その一人はミツキの弟のカツキだった。可愛らしい見た目で、弟よりも年下に見える彼氏はミツキに気づいていながらも弟にキスをする。それから数日後、公園を横断しようとしたとき、見覚えのある彼に声をかけられて食事をすることになり──。

 帰宅途中、ちゅーっと真夜中の公園でキスをするカップルに出くわした。

 初めて見る男同士のキスシーンに思わずあとずさる。

 だけど見覚えのある横顔に俺の意識が引っ張られた。

 一緒に暮らす俺の弟のカツキだったからだ。

「カツキ、もう…」

「んー」

「ぁ…」

 そのとき、男は俺に気づいて目を細めた。そして、カツキの腕にまわして背伸びをする。

「…ッん」

 初めて見る男同士のキスシーン。それも弟と、その彼氏の。

 静かな公園に響くのは、二人のキスをするいやらしい音。

 心臓がバクバクと脈をうち、二人から視線をそらすことができない。

 弟の彼氏が俺をじっと見ては、すぐにまぶたをふせる。

 そしてまたまぶたをあげて、俺の心臓を射抜くように捕まえるんだ。

 思えばこの出会いが俺を狂わせたのかもしれない。

*****

 会社を定時にあがり、近道の公園に足を踏み込む。

 またあの場面と出くわすと思うと気が乗らなかった。

 足をとめてため息をついたとき、人の気配が隣からした。

「今日はカツキくんいないよ」

「ひゃうっ!?」

 変な声が出た口を両手でふさぎ、ドッドッと暴れる心臓をなだめる。

 俺の目の前に現れた男、見覚えのある弟の彼氏は棒付きキャンディーを口から出して笑った。

「おにーさん、驚きすぎ」

「…ご、ごめん」

 隣を見れば、俺よりも身長の高い男がいる。

 カツキと並んでたときは小さく見えたのに、俺よりは断然デカい。

「んーん。おにーさん、カツキが言ってた通り可愛いね」

「へ…!?」

「身長も僕より小さいし、小柄で可愛い」

「…確かにカツキよりは小さいし、兄貴には見えないかもだけど…。って、俺のこと知ってんの?」

「うん、もちろん」

「…そうなんだ。仲いいんだね」

「だって高校からの付き合いだもん」

「え、カツキの同級生…なのか?」

「失礼なおにーさん。こう見えて僕は25歳だよ。お医者さんなんだぁ」

「い、医者!?」

 こんな若い見た目でお医者様とは…。

 しかも俺より三つ下の弟の同級生。全然見えない。

「よく驚かれる。けど腕は本物だから安心してね」

「あ、ああ…?」

 そのとき、カランと音がなって視線が向く。

 口の中でアメを転がす彼の唇に自然と目がいった。

「おにーさん、よかったら僕と食事しない?」

「え…?」

「金曜日だから明日は休みでしょ? せっかく再会したんだし」

「…あ、ああ」

*****

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