吸血鬼との淫靡な契約
中世ヨーロッパ、小さな村でリンゴ売りをしているレオは村長から不穏なうわさを聞かされた。村近くの古い城に吸血鬼が住んでいて、村の人間を襲っていると。迷信だと思っているレオは仕事が終わり、その城へ向かうことにした。そこで見たのは赤い瞳の吸血鬼だった。
「レオ、村に吸血鬼がやってくるそうだ」
中世ヨーロッパの小さな村で暮らす俺は村長からいきなりそう言われた。成人して家の仕事を手伝っていて、馬車にリンゴを詰め込んでいるところだった。
「吸血鬼なんているわけないでしょう? きっと迷信です」
「いや、迷信じゃない。私は見たんだ。若い女性に男が顔を埋めているのを。お前は古い城を通って、隣の村にリンゴを持っていく予定だろう? 気を付けなさい、吸血鬼はきっとその城からやってくる」
「わかりました。ありがとうございます」
*****
村長の話を聞いても俺はまだ半信半疑だった。吸血鬼なんてお話のなかだけの存在だと思っていたから。
隣町にリンゴを配達し終わり、帰りに村外れにある古城へと向かった。そこはずっと昔に建てられたものらしいが、今は誰も住んでいない廃墟になっていた。森に囲まれていて、近くに民家はなく、辺りには他に人影はない。
「ここか…」
古城を見上げて呟いた。ここに吸血鬼がいるというのだろうか? それを確かめるためにここまでやってきた。
扉に手をかけると鍵がかかっていなかった。そのまま中に入ると埃だらけの部屋がいくつかある。長い年月放置されていたらしく、床には蜘蛛の巣まで張っていた。
しかし奥に進むにつれてだんだんと見慣れぬ光景が現れ始めた。まるで誰かが住んでいたかのように生活感がある部屋が増えてきた。それに何より甘い香りが漂っている。花のような果実のような不思議な香り。それがどんどん強くなってきて、頭がクラクラしてくる。
「なんだ…これ…?」
俺の足取りは次第に重くなっていった。心臓が激しく脈打っていて呼吸も荒くなってきた。ふらつく足をなんとか動かして進んでいく。
すると、廊下の奥に大きな階段が見えてくる。その真ん中に人が立っている。赤い瞳をして黒いマントを着た長身の男。それはまさしく噂の吸血鬼だった。男はこちらを見るとニヤリと笑った。
「こんばんは」
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