濃密に変化する日々を写真に収めて

・作

安田翔は仕事に追われ、無気力な日々を送っていた。仕事帰り、ベンチで休んでいた公園で写真が趣味の連と知り合う。彼の写真は何気ない風景でも美しいものに変えてしまう。平凡な自分でも輝けるものになるのかと、翔は連に写真を撮ってもらえるかと考え、彼を自分の家に誘った。

僕、安田翔は仕事に追われて無気力になっていた。何をしても満たされない。自分はこれでいいのかと思っていた時、彼に出会った。

 仕事帰り、家に帰るのも億劫になり公園のベンチで項垂れていた。そこで出会ったのが連だった。彼は見知らぬ僕に目を合わせニッコリ笑ってくれた。その笑顔にどうすればいいのかわからず、話しかけてしまった。なんだか彼の声は僕を安心させた。

「お疲れさま、翔。今日は公園で写真を撮っているんだ」

 そうして。今日は何にもない地面とか、草とか葉っぱとか撮っている。そんなものを撮っていて楽しいのかわからないまま眺めていると、みて、とカメラの液晶画面を見せられる。

「すごい」

 そのカメラには、何の変哲もないはずの景色が、美しく煌めいているようだった。

「いつもの景色もカメラに切り取ってあげるだけで、輝いて見えるんだ。きれいでしょう?」

 自分が切り取った景色に柔らかく微笑む連は美しかった。

「平凡な景色がそんな風に変わるんだったら、平凡な僕も連に撮ってもらえば輝けるのかな?」

「ふふっ、じゃあ撮ってあげようか?」

 僕の言葉にそのままカメラを向けようとする。だけどたくさんの人がいる公園で僕を撮ってもらうのはなんだか恥ずかしい。

「あ…えっと。よければ僕の家に来ないか? 近くなんだ、お茶でも」

「えっ、いいの? 行きたい! 翔くんの家に」

 公園で出会っただけの彼を自分の家に誘っていいのか疑問ではあったが、喜んでくれているようでよかった。この後の予定もないとのことで、彼を家に連れて行った。

*****

「どうぞ、コーヒーでいい?」

「うん、ありがとう」

 連にはリビングのソファに座ってもらって、急いでコーヒーを淹れる準備をする。新しくコーヒー豆の袋を開け、コーヒーミルで豆を挽く。

「ん?」

 リビングからカシャッっと音が聞こえた。その音の方向に振り返ると連がカメラを構えていた。

「翔くんを撮るんだったよね。コーヒーを淹れているだけでかっこいいよ」

「えっ、そんなことは…」

 それだけでかっこいいなんて言われて恥ずかしい。毎日していることなのに。

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